。* 遙かなる時空の中で *。

□藤の香に惑わされて
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ふんわりとした紫の花をつける藤。
鼻孔をくすぐる甘い香に自然と私は目を閉じた。

しばらくそうしているとふと、人の気配がした。
誰かと思い瞼をあげれば、私は思わず目を見開いた。


「おや、藤の香に誘われて来てみれば私の姫君だとは」

『……友雅さん』


彼は遠い国からやってきたと噂されている“龍の神子”の八葉の一人であり、その役目として昼の今時は龍の神子の元へと赴いているはず。

なぜここに、という顔をすれば友雅さんは私の顎を掬った。

翡翠色の瞳と視線が交差する。
じっ、と見つめれば苦笑が聞こえてきた。


「そんなに見つめられては、さすがの私でも我慢できなくなるね」






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