。* 遙かなる時空の中で *。
□霧の中で
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『ここ……どこ?』
迷った。確実に迷った。
少し前から薄々と気付いてはいたが、迷ったという事実を認めたくなくてただ当てもなく筑紫の深い霧の中をさまっていた。
『あー……罰が当たったのかな?』
自分は何て馬鹿なことをしたのかと思う。
那岐が千尋と仲がいいのが何故か気に食わなくて。
二人の仲がいいのは今に始まったことじゃないのに。
那岐とケンカをしてしまった。
ケンカというよりは自分が一方的に啖呵を切ったのだけれど。
そしてその勢いのままに天鳥船を飛び出し、筑紫へ来た。
結果的に迷ってしまったけれど。
『うーん』
那岐に謝りたい。だが、迷ったままでは謝ることもできない。
散々歩き足の進みが遅くなってきた。
*