。* 遙かなる時空の中で *。
□好き
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『柊』
その名を呼べば彼は手にしていた竹簡から私へと顔を向ける。
深い森を思わせる少しばかりクセのついた髪が動きに合わせて揺れる。
「これは我が君。どうかなさいましたか」
『うん。岩長姫が呼んでるよ。群議だって』
「そうでしたか。ではご一緒に参りましょうか」
私は笑顔で頷くと柊の腕に自分の両腕を回す。
「そう猫のように可愛らしくすり寄られては、思わず…」
『思わず……?』
首を傾げてみると柊は私が掴んでいない手で自分の額を覆った。
『えっ、えっ!?』
何か悪いことでもしたのだろうか?
それとも具合でも悪くなったのだろうか?
不安になり背伸びをして額を覆う柊の手に自分の手を添える。
*