想愛〜omoiai〜
□始まりのはじめ
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放課後の誰もいない教室。
窓から外をながめると口元が緩む...
ここから少し離れた位置に設置された図書室に人の姿。
夕日に照らされたアイツは、熱心に本を読んでいる。
本のタイトルが見えなくても、内容が何か察しがつく。
「放課後は私とキャッチボールですよ。」
今日の昼休みに言っていたことを思い出す。
きっと、今 真剣に読んでいるのは野球の本とかなんだろう…‥
「キャッチボールで野球の知識はいらないだろっ」
ちょっとずれたアイツの行動にふっと笑いがこみあげる。
いつまでもながめていたいが、そろそろ約束の時間に遅れるから教室を後にした。
教室を出てすぐの階段を降りていると、数段下にアイツが視界に入る。
図書室にいたはずだよな、と考えていたら声をかけてきた。
「キャッチボールしに行きますよ」
笑顔のアイツが夕日に照らされている時は、時間が止まったかのように感じた。
教室の窓から見た横顔より、今の方がすごく綺麗だった…
コイツの顔が頭から離れなくなったのは、この日が初めてだと思う。
プロローグEND