DRRR

□「キライキライもスキのウチ」
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はぁ、
は、…っ

乱れた呼吸で、人波をすり抜けて行く。



(まずった…、失敗した)
そんな単語だけが、脳裏を占める。

(こんなの、オレじゃない
こんなの、オレじゃないっ!)


何時の、冷静で冷淡な情報屋 折原臨也ではない。

人を愛してる、
人間観察の好きな…

情報屋、折原臨也はどこへ消えた。

何時もなら、全てを鏡の向こうから見てる冷静な己が居るのに。




苦しい、
苦しい、


ムカつく位、大嫌いな金色が脳裏を掠める度、

胸が締め付けられる。

上手く呼吸出来ない


(なんだよ、これっ)




ジワリと目頭が熱くなる。
胸が痛い。





は、ぁ…


敵前逃亡なんて、何時もの事。

特にシズちゃんとは、そうでもしなきゃ死んじゃうってーの。


一瞬、逸れた思考。

けれど、その中心にはやはり大嫌いな金色の姿。



(もぅっ…、だからさっさと死んでくれたらっ)

苦しそうに顔を歪め、気づけば

自宅付近まで戻って来て居た。

(さっさと、寝よう)


こんなの、きっと熱いシャワーでも浴びて
ゆっくり眠れば、元に戻る。


何時もなら、そんな風にうやむやにする事も無いが、事、これに関してはそれが一番ベターだと思って居た。






けれど、それも、


今日に限って言えば、



そんなささやかな願いすら、叶わなかった。
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