DRRR
□kiss me,please!!
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「シズちゃん、キスして!!」
「…はぁ?」
目の前の男。
己の視線より僅か下から、オレを見上げて真剣な顔で口を開く。
いつもの様に、街中で見かけた黒。
いつもの様に、手身近にあった道路標識を引っこ抜き、大リーグのバッター如きフルスイングをかます為振りきろうとした標識は、
あっという間に距離を詰めて来た、黒の発言により、呆気に取られ、気が緩み手からすっぽ抜け、
明後日の方角へと突き刺さった。
「ねぇ、シズちゃんってば!!」
1m程目先、
呆気に取られたままのオレに、目の前の黒は言葉を重ねる。
「キスして!!」
いやいやいや…
バカだ、バカだと思ってたが、本当にバカなのか。
それとも、コレも奴の言う人間観察の一環なのか。
はたまた、また、オレを何かの罠に嵌める為の伏線なのか。
(…頭痛くなって来た…)
オレの脳内は、そんな思考が湯水の様に湧き上がっては消えて行く。
目の前の黒は、バカの一つ覚えか、
その言葉しか、知らない子供の用にその言葉だけを吐き出す。
「お前、何言って…」
整理仕切れない思考と、戸惑ったままの脳内。
それでも、このままだんまりって訳にも行かず、何とか言葉を紡ぎ出す。
「何、ってキスしてって言ってのっ!!シズちゃん日本語通じ無い程、頭悪かったっけ…あぁ、そうかシズちゃんってやっぱり筋肉バカだから、オレみたいな人間の言葉理解出来ないんだね」
ツラツラと相変わらず、減らない口で好き勝手な言葉を並べ立てる。
「だ…から、」
あぁ…もぅ、面倒くせぇったらねぇ
噛み合わない会話。
ガシガシと髪を乱暴にかき乱し、深い溜め息を吐き出す。