小説

□雪粒の嵐(Christmas-Special)
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雪粒の嵐(Christmas-Special)


その街にやって来るハンター達を出迎えるように立つアーチには、鮮やかな赤と緑のリボンが掛けられ、街全体に掲げられた色とりどりのランプがゆっくりと点滅を繰り返して、暮れたばかりの夜を彩る。

街外れの空き地では大きな火床が設けられ、その回りでは人々が楽しそうに歌を謡っていた。

行き過ぎるハンターや街人達もそれぞれにクリスマスカラーの扮装をしており、酒も入っているのか、若干顔が赤らんでいる者も多い。


――街の広場は今やクリスマス一色だ。


夜の空からは、お誂え向き(おあつらえむき)に白い雪がチラチラ舞い落ちる。

この雪量と寒さでは、明日の朝には一帯がすっかり銀世界となっているだろう。



だが、そんな楽しげな街のハンターギルドは、それに似つかわしくない緊迫した様子があった。


「明日までに、どうしても必要なんです!」

竜人族の年老いたギルドマスターに訴えるているのは若い男であった。

「あと十枚、ガウシカの毛皮が無いと子供達にコートを作ってやれないんですよ!」

ギルドマスターは受付カウンター越しに目を剥きながら押し迫ってくる男に言った。

「そうは言っても今日はお祭りだ。こんな夜に雪山へ登るようなハンターはいないよ」

どうしようもないよ、とギルドマスターはその頼みを断ると、男はガックリと肩を落とす。


「子供達に雪遊びさせてあげたかったな……」

未練がましいセリフをブツブツ言いながら、若い男はギルドの出口に向かって足取り重く歩いてゆく。


「待って!」

すると突然、この辺りでは余り見た事がないハンターが声をあげた。

「僕達が行きます」


そう声を掛けてきたのは、藍鉄色のランスを担いだ眉目秀麗な青年だった。

凛々しい顔立ちも去ることならが、彼が身に着けている両肩から白銀の角が伸びた白に輝く鎧も美しい。


その青年の横には、硬質の鉱石やライトクリスタルをふんだんに使用した銀色の鎧を纏った小柄な女の子も立っていた。


彼女はペコリと男にお辞儀をすると、その背に担いだ赤色の大剣がカチャと小さく鳴る。

そしてすぐに彼女はギルドマスターの方に向き直り、ハキハキした口ぶりで言った。

「私達、まだこの街に着いたばかりでお酒も飲んでないし、明日の朝までならどうにか集めれると思います」

女の子はニッコリと笑い、同意を得るようにランスを背負った青年を見上げる。

青年も赤茶色の瞳で女の子を見つめ、にこりと微笑み頷いた。


「それならば、君達に任せる事にしよう」

ギルドマスターは若い男の依頼を正式に受ける手続きを始める。

依頼書を作る受付嬢を見つめながら、毛皮を所望している若い男は少し不安そうな顔をしていたが、女の子はそれを払拭するように元気よく言った。

「大丈夫! 私達に任せてください」


すると男はパッと笑顔になり、

「ありがとうございます!! これで子供達もきっと雪遊びが出来ます!」

心底嬉しそうに礼を述べながら、女の子の右手を両手で握りブンブンと上下に振った。

「い、いえ。そんな……」

照れ臭かったのか、女の子はショートに切った赤毛の髪を決まりが悪そうにモジモジと触る。

それを見て、ランスの青年はプッと吹き出して笑った。

「ははっ! メリーって本当にそういうの慣れてないね。顔が真っ赤だよ!」

青年に図星されるとメリーの頬は更に紅潮してゆく。

「サムエルがそういう事を言うから赤くなるんじゃない!」

メリーにそう抗議されたサムエルは、ますます楽しそうに声を出して笑っていた。

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