小説

□紅蓮の灼熱(case/Xena)
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「お疲れ!」

狩りから帰って来たハンター達が酒場で楽しげに乾杯している。

この酒場に居る者達はそれぞれ違うパーティーで、それぞれ違うクエストをこなして来たのだが、そんな事は関係ない。

各所のテーブルに飲み歩く者もいれば、その場で踊り出した酔っ払いの横で手拍子しながら囃し立てる者もいる。


そう。 この場にいる皆が気兼ねのない仲間なのだ。



そんな楽しげな輪の中には……

人懐こい笑顔で希望に満ちた両目をキラキラさせた若き頃のゼナがいた。





ハンターになって早一年。

同時期にハンターとなった仲間達と比べ、ゼナの腕前は頭ひとつ抜きん出ていた。

近接武器は全くと言っていいほどのド素人であったが、遠距離武器については駆け出しのハンターにしては際立っていた。

特に弓に関しては、中堅のハンターでも時として及ばないような閃きと強さがあるのだった。




今、ゼナの居るこの街には規模の大きなハンターギルドがあった。

ギルドには数多のハンターが登録しており、各地から様々な依頼が舞い込んでくる。

このハンターギルドは一見大衆酒場のようだが、その店の奥には面倒見の良いギルドマスターが居るバーカウンターがあった。

年老いてはいるが皆の信頼を集めるギルドマスターは、そこでこのギルドを仕切り、そしてハンター達を毎日見守っている。

ゼナがこのギルドに登録したのも、このギルドマスターの下で活躍したい、という思いがあったからだ。


だがもうひとつ、このギルドにはゼナにとって魅力的な要点があった。




「おーい! 皆、聞いてくれよ!」

酒場の真ん中で大男が両手を口に当て、酒飲み達に呼びかける。


「今日で俺達のパーティーは解散するぜぇ!」


その言葉に一瞬酒場の賑わいが静まる。

が、すぐにザワザワと騒ぎが起こった。


「う、嘘だろ……?」

もちろんゼナも絶句する。



……もうひとつの、魅力的な要点。

それは各地で名を轟かし、『策士』とも呼ばれている憧れのハンターがこのギルドに居る事であった。

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