Sprint!!

□T
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……Bonnie's side


朝、小さいけれど物音がしたから目を覚ますと隣のベットで寝てるはずのヴェルディがいなかった

寝ぼけ眼で部屋を見渡すと、姿見の前に人が立ってる


「ヴェルディ…?」


まだ寝てるナミたちを起こさないように、できるだけ小さな声で呼んだけど、寝起きで上手く声が出なかった

それでも気付いたみたいで、くるりと振り返った

姿見の前にいたのはやっぱりヴェルディだった


「ごめん、起こした?」

「勝手に目が覚めた…」


近付いてきてくれたヴェルディの腰に抱き着くと、ふわりと甘い匂い

ヴェルディはクスクス笑ってウチの頭を優しく撫でる

まだうっすらとぼやける視界でヴェルディを見ると、いつもよりめかし込んでいた


「デート…?」

「まさか。でも大事な用事に違いはない」


そう言って笑うヴェルディの表情は優しかったけど、いつもより切なくて儚かった

まるで、どっか遠くに行ってしまうみたいで仕方がない

だからウチは、もっと力を込めてヴェルディに抱き着いた

ヴェルディが離れないように

遠くに行かないように


「ボニー、私そろそろ行かなきゃ…」

「行くってどこに?ねぇ、ヴェルディ、」


行くなよ

そんなのウチの我が儘だってわかってる

だけど離したくない、離れたくない

ヴェルディは困ったように笑って、ずっとウチの頭を撫でてくれた


「ボニーお願い。今日は大事な日なんだ」

「今日中に帰ってくんのか…?」

「うん。今日のお昼頃にはちゃんと帰ってくるよ」

「本当に?」

「ホントに。だから、いい子に待っててね」

「ウチ子供じゃねぇ…」

「だって、今のボニー駄々をこねる子供みたい」

「…ちゃんと帰ってくるなら、良いぞ」


ヴェルディから離れると、また優しく頭を撫でて“ありがとう”って極上の笑顔で言った

ヴェルディが部屋を出て行った後、ウチはまた眠りにつく








……Heroine's side


「おい、門の前に停まってる車。外車だぜ、アレ…」
「誰のお迎えかしら…」
「1Aのネフェルタリさんじゃない?」
「つか、あの車の横に立ってる男の人さ。ドラムの知事じゃね?」
「あ、私テレビで見たことある!」


寮を出ると、門の前には黒の外車が停まっていた

車に近づくときに、異様なほど背中に視線をひしひしと感じた

「久しぶりだね、ヴェルディ」

「うん、久しぶり」


すでに車から出て、紳士に車の扉を開けてくれたのは最近ドラムという国の知事になったドルトンさん

実を言うと、私の姉さんの婚約者

言ってしまうと私の義理の兄になる

車の中に入ると、姉さんがすかさず抱き着いてきた


「ヴェルディ久しぶり!」

「久しぶり姉さん。元気そうでなにより」

「それは貴女もよ、ヴェルディ。高校に入っただけで随分垢抜けたわね。学校生活が上手くいってるみたいで安心したわ」


そう言って、姉さんは私の頭をぐりぐりと乱暴に撫でた

左手の薬指にはめてる指輪が時折頭にぶつかって痛いが、まぁそこはよしとしよう


「そうだ、姉さん聞いてよ。今ね、ローと同じ学校でクラスも一緒なの」

「あら、ローってあのトラファルガー先生の息子さん?意外な運命があるもんねー…」

「外見大人っぽくなったけど、あんまり昔と変わってないようで安心した」

「そう、なら良いわ。とにかく学校が楽しそうでなにより」

「うん、充実しすぎて怖い。新しい友達もたくさんできたし、信頼できる人もできた。もう自分を隠さなくでも良いみたい」

「そう。きっと、父さんたちも喜んでるわ」












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