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□第二章 ―home―
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玄関に陽ちゃんを降ろして、車庫に車を止め戻ってくると姿はもうなかった。
早々と家の中に入っていったようだ。
確かに昔住んでたわけだから、案内とかはいらないけど…
少しぐらい待ってくれても、と思ったり。
予想はしてたけども…
やっぱり哀しいな…
眉毛が自然と下がるのが自分でもわかる。
ため息は外でつき、中に入るときは表情も元に戻した。
見覚えのある、懐かしい玄関を抜け廊下をわたり、かつては皆でよく集まった部屋へ向かう。
陽ちゃんが何処にいるかなんて知らないけど。
なんとなくそこにいる気がしたんだ。
部屋にはいると、昔いつも陽ちゃんが座っていた席に座っていた。
そんな小さなことが嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。
「南さん。」
「あ、はい。」
「夕食を…お願いします。」
車の中より幾分か空気は柔らかくなってるが、やはり陽ちゃんはこっちを見ない。
ただボンヤリとテーブルの一点を向いてる。
長すぎる前髪で瞳の様子すら伺えない。
こぼれた笑みも引っ込み、また悲しくなった。
オレは小さくうなずき夕食の準備にとりかかることにした。
こうして何かしていないと…
なんだか泣きそうだから。
陽ちゃんはオレに背を向け。
オレも陽ちゃんに背を向け作業する。
なんだか、今のオレたちの気持ちを表してるみたいで…
少し胸が痛んだ。
オレだけ…?
こんなに会いたかったのは?
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