物語

新たな追憶〜契り〜【改修版】
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そう、あれは確か…

思い出そうとしただけで顔が弛むでござる。

薫殿に見られたらまた助平と怒られてしまうでござるなぁ

だけど…でござるよ




―――――――。


薫殿に気持ちを告げられて知り、薫殿の側にいる事を決めたあの日から。

弥彦が家を出て二人で暮らし始めて…季節を一回りして。

恋仲になってもなかなか薫殿との関係は変わらず…ついこの前、やっと初めて接吻を。

そんな二人で。

季節が山の色を大きく変える前の肌が寒さをはっきりと感じる様になった頃。

寝る前の一時、薫殿に勧められ妙殿に頂いた酒で晩酌で心地良くなっていた。

隣でお酌をしてくれる薫殿の香に酔いそうなのを薫殿に気付かれ無い様に気を付けながら、二人の時間に酔いたいのも素直な気持ち。

「剣心、美味しい?」

にこにこって笑顔でお酌してくれる薫殿が可愛い。

「美味しいでござるよ。薫殿。」

薫殿の他愛の無い話が続いている。

他愛の無い話だが、この時間が拙者にとっては大切で。

単純に幸せだなと感じていた。

月も綺麗。

隣には大切な御仁。

酒が美味しく無い訳が無い。

当然、呑む加減も速くなる。

「あら?剣心、全部無くなってしまったみたい…。」

薫殿は残念と言う顔で瓶をひっくり返している。

そんな仕草も可愛いくて…つい、抱き寄せたくはなる…。

「しかし、薫殿。酒を飲んでるのは拙者、何故薫殿がそんな残念そうな顔をするでござる?」

「だって、剣心っ…!」

言い掛けて薫殿の言葉が詰まる。

「薫殿?」

覗き込んだ薫殿の顔は酔ってる訳では無いのに何故か赤く…それも可愛い。

顔を寄せ口付けたくなるが…。

「もう少し…。」

「もう少し…?」

瞳から気持ちを読もうと覗き込めば、そらされてしまった…だが、其すら可愛く腕の中に納めたくなるが其は拙者が不味いので出来ずにいた。

(抱き寄せれば酒のほろ酔いと季節の涼しさのせいで、間違いなく離せなくなる。)

「薫殿?」

赤い赤い顔の薫殿の想いを聞きたくて。

聞かせて欲しくて。

顔を覗き込み問い詰めれば…。

「もう少し剣心といたいの!悪いっ!?」

そっぽを向いて今度は耳まで赤くして膨れた薫殿。

嬉しい事を言って貰ったのに何故か少し怒られてしまってる様な気がした。

だけど、そんな事は気にならぬ。

そんな愛しい言葉を吐き、耳まで赤くして背を向けられたら…。



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