物語
□世界に二人きり?宿で
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宿に戻り、雪だらけの剣心に温泉に行くように言った。
大丈夫だから私に先に湯浴みを進める剣心。
でも、雪が溶け着物がべちゃべちゃの剣心を置いとけない。
風邪でも引いたら大変と小さい子を納得させる様に言い聞かす。
やっと着替を持ち温泉に行く剣心の背中に溜め息が出た。
(これは将来頑固おじさまになってしまうんじゃないかしら。)
部屋で一人剣心を待つ時間。
運ばれてくる料理は二人分。
ついでに二部屋ある奥の部屋に敷いていかれた布団は二組。
此処に二人きりで来た事を今更意識させられる。
(私、何て大胆な事をっっ!別々の部屋にすれば良かったなかしらっっ?!
でもっ、それじゃ寂しいわよね!しかも、一応ね、恋仲と言うか…想い合ってるわけだし…でもでもこれじゃまるで)
と、二組仲良く隙間なく並んだ布団を睨む。
取り敢えず、この間の襖は閉めておこう!
ぱしっ。
と同時に。
「薫殿〜。良い湯でござったよ〜。おろ?良い匂いでござるなぁ。」
剣心がにこにこしながら部屋に入って来た。
「おかえり。ちゃんと温まれて来た?」
と声をかけて手が止まる。
「剣心!ちゃんと拭かないと!」
剣心は私の隣に座って脱いだ着物を畳んでいた。
髪からぽたりぽたりと滴を垂らして。
「薫殿も早く湯へ…おっろぉ〜。」
私は自分の手拭いを掴み剣心の頭をわしゃわしゃと拭き始めた。
「もう!本当に風邪ひいたらどうするの?」
(たぶん、私に少しでも早く湯に行かせ様と体を拭くのもそこそこに戻って来たのね。)
ごしごし。
「かおるどの゛ぉ゛〜〜痛いでござるよぉ〜。」
手拭いの中で剣心の情けない声が聞こえる。
ごしごし。
「おろ〜?薫殿〜。目が回るでござるよぉ〜。」
「えっ。あら?剣心?」
手拭いを外してみると目をくるくる回してる剣心。
「ごめんね。剣心。」
「大丈夫でござる。なので、薫殿湯浴み行くでござるよぉ〜。」
ぽんぽん。
「よし!」
半乾き位に拭けたのを確認して力を入れないで剣心の頭を叩いて立ち上がる。
「じゃあ、温泉行ってくるね。」
まだ、目を回してる剣心に声かけて少し心配だけど部屋を出た。
温泉までの廊下想うは剣心の事。
(本当にしっかりしてるし、あんなに抜け目無い人のはずなのに…たまにとんでも無く放って置け無いの。それが不意打ちだから、読めないから目が離せ無い。)
抱き締めた少し湿ってしまった手拭いからは少し剣心の石鹸の匂いがした。
だけど、何だか少し温かくなる。
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