物語

色想い
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あぁ今日は剣心が居なくて、一人でお留守番。

お昼から夕涼みも晩御飯も夜の月見も晩酌も一人で、もう寝る時間なのに何か床につく気になれない。

(あぁ…寂しいのかなぁ。私ったら。)


雲隠の月を眺めてたら、いつもより熱めのお湯で湯浴みを済ました躯を冷ます。

(はぁ〜、いつもなら剣心と晩酌時間なのになぁ。。。つまんないなぁ。一人で晩酌でもしようかしら?)
台所へ向かってお猪口一つとお酒を持って縁側へと向かう。


――――――。

「はっぁ〜。」

だんだん頭の中がぽわんとしてくる。

(いつもなら剣心と昼間あった事とか話してる楽しい時間なのになぁ。。。)

こくん。

もう一口お猪口から口に含む。

(あぁ…昨日は今の時間手を繋いで散歩に出掛けた時間だなぁ。)

ぽわんとした頭は感情を素直にさせ過ぎる。

だから、もっと強く酔ってしまいたくなる。

そして、寂しい感情さえも曖昧にして思考がぽわんとなる時を待つ。


こくん、こくん。

二口飲み干し、雲が切れた深い藍色に浮かぶ黄色い透ける様な月を見上げる。


(あぁ…昨日は月を見て優しく肩を寄せてたのに。。。)


きゅっと寒さを感じた様な気になって自分の肩を抱いた。

けど、剣心の腕の暖かさには敵わなくて…。


こくん、こくん。

もう二口お酒を口に含む。

「ふぁっ…。」

麻痺に近い思考浮遊。

(あぁ…そう月を見て目が合ったら優しく口付けしてくれた。)

想い出す様に自分の唇を指でなぞってみるけど、やっぱり感触までは剣心としては満たしてくれない。


寂しさに心が揺らぐ。。。

だけど、眠りには付けない、剣心が帰って来ない様な気にまでなってる。


こくん。

ゆっくり口に含む。

(剣心…逢いたいよ。)
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