物語

新たな追憶〜契り〜【改修版】
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ふわり。

後ろから抱き締めずには居られなくて。

驚いて振り向いた顔に笑顔になる。

「悪くないでござるよ。」

ちゅっ。

もう、止まらぬ。

益々赤くなった顔に顔を寄せ口付けする。

益々大きくなる瞳。

「け、けっ、剣心っ!!」

益々赤くなった顔でぽかぽかと叩かれる。

でも、そんな可愛い嘘の力じゃ痛くないでござるよ?

薫殿!

分かってるから態と〔わざと〕。

「大切な御仁からそんな風に言われたらこうしたくなるでござるよ?悪いでござるか?薫殿?」

態と問う。

「悪くないで…ござる…。」

下を向いたまましか言えない薫殿が愛しくなる。

きゅっ。

離したくない。

突然沸き上がる感情。

(酒のせいか、今宵の拙者は少々鬱陶しいでござるよ。)

「薫殿、では拙者の部屋でお話しでも。」

にこにこして言えば。

「いいの?」

意外な言葉だったのかぎゅっと拙者の肩を着物を掴み問う薫殿。

「どうぞでござるよ。」

笑みと一緒に返事する。

「剣心、寝るとき一切、人を部屋に入れないから人に寝る時部屋に来られるの嫌なのかと思ったわ。」

「そんな事は無いでござるよ。」

笑顔で答え…後ろめたくなる。

寝る時に自室なんかに入れれば理性の保守の自信が無かった。

其は今宵も同じだが、其より一緒に居たいと言ってくれた薫殿と放っておけない。

それに離れたくなかった。

拙者の部屋で薫殿と肩をくっつけて話す時間はゆっくり流れ。

皆の事、薫殿の今までの事、道場の事、拙者の幼い時の比古師匠との日々の事、流浪の事。

会話は途切れず。

殆どは薫殿の話を拙者が聞くいつもの会話。



しかし。

「剣心は流浪人して、とどまろうと思った事は無いの?」

ふと出た薫殿の問い。

うーんと考えて。

「どうでござろう?多分無かったでござるよ。」

そんな事、此処に来るまで考えた事も無かった。

薫殿にあの日、あんな風に告白されるまで。

「そう…。何故かしらね?剣心を必要とする人はきっとまだたくさんいたはずよ。」

「そうでござるかな?」

「そうよ!でも良かった。じゃなきゃ、剣心は今此処に居ないものね。本当、良かった♪」

そんな薫殿の笑顔に心が温められる。

「薫殿。」

振り向いた薫殿に口付け。

長く、離さない。

優しく、深い接吻に変えてゆく。

甘い接吻に戸惑いを感じ、反応は無かったが拒否も無かった。

変わりに拙者の肩を掴む薫殿の指に力が入り始めていた。

舌はねちょりと生暖かい感触。

溶け合いたい。

そんな感情。

否、欲情。

「…っ…。はぁ…っはぁ…。」

唇を離せば息が続かなくなった薫殿が酸素を求める。

「薫殿、すまぬ。」

「…っ…はぁ…。剣心?」

理解出来ずにいる薫殿の耳に顔を寄せ。

「拙者、薫殿が欲しくなったでござるよ。」

脳に言葉が届くまで一拍。

みるみる赤くなる薫殿。

理解したでござるかな?

そう、男は皆、獣でござる!

簡単に手の中に納まってはいけないでござるよ?

薫殿。

「剣心〜!」

またぽかぽかと嘘の力で叩かれる。

可愛い反抗に愛しさは増ばかり。



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