作品その2

□爪(仁王ブン)
1ページ/1ページ

「…痛そう」
「ん?何がじゃ?」
「背中」
「…あー…」
「消毒してやろうか」
「何、舐めてくれるんかの?」
「バーカ」

救急箱から消毒液とガーゼを出し、
爪痕に這わせる

「い…っ…」
「意外と深いもんだな」
「心なしか愉しそうに聞こえるんじゃが…」
「いやぁ、もう、仁王くんが心配で心配で」
「棒読み過ぎるぜよ」

予想したよりも丁寧に治療を施された
その間にどれだけ鳴かされたかは、考えないようにする

「んー俺も爪切ろう」
「切っちゃる」
「大丈夫かよ?」
「お礼じゃ、お礼」
「じゃあ遠慮なく」

背中に、ガーゼ越しにキスを落とされた

「キスなら口にしてほしいの」
「寝言は寝て言え」

言って、手を出してくる
指の一本一本を
こんなに意識して見る事など無いので
なかなかに新鮮

「器用だな」
「そうかの?」
「うん、正面からとか俺は無理」
「チビたちには?」
「膝に乗せて切るから」
「大人しく切らせてくれるんか?」
「一回肉挟んでからは、大人しいな」
「DVじゃー」
「いやいや、大事にしてますが」
「俺とどっちが大事?」
「比較するまでもなくチビだな」
「妬けるの」
「あれはまだ守ってやらねぇとダメだけど、お前は違うだろ」
「ま、仕方ないの」

きちんとヤスリをかけて整えると額にキスを落とす

「仁王ーお前、俺に言ったこと覚えてるか?」
「何じゃ?」
「キスするなら口にしてって、…」

触れ合った唇が離れる

「これで良いかの?」
「…おう」
「まさかブンちゃんから強請ってもらえるとは思わんかったの」
「謀りやがって」
「何のことじゃ?」



 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ