作品その2

□そばにいたい(塚リョガ)
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「なー」
「どうした」
「オレと仕事、どっちが大事?」

部活後の部室
夕日が入る部屋に二人きり
部誌を書いている所にリョーガが来るのは久し振りで
少しばかり機嫌が良かったのに

「何に影響されたんだ」
「んー…」
「越前の痴話喧嘩あたりだな」
「まぁ、そうなんだけど、な」

珍しい
構って欲しいという話題を振っておいて
こちらを見ようとしないなんて

「リョーガ」
「何だ?」
「別れ話でも切り出すつもりか」
「…そうだと言ったら、どうすんだよ」
「閉じ込める」
「無理だろ」
「剥製にすればそうでもないぞ」

「それも良いな」

それも良いな?
何より自由なリョーガが?

「なぁ、手塚…」
「何だ」
「殺してくれる?」

スルリと伸ばして来た手は
触れる前に、パタリと落ちた

「…今は無理だ」

座ったままのリョーガを抱き締める
無気力なリョーガは、抱き締め返してはくれない
ただただ顔をうずめて呼吸を繰り返すのみ

「………ん、」

ようやく、肯定を表したので腕を緩める
見上げ、視線を合わせてきたリョーガは目を閉じた

黙ってキスを贈る

今出来ることは、体温を分かち合うことだけ



end

 
 

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