お題小説

□繋いだ手(日吉滝)
1ページ/1ページ

「寒い」
「そうですね」

すっかり陽も落ちた部活帰りに並んで帰宅する
吐く息は白く、体感温度は摂氏0度

暑がりで寒がりな滝は、帽子、マフラー、コートと、暖かそうな物を着けて
それでもまだ、寒いと言う

「寒いー」
「それは俺もですよ」
「寒い」

繰り返し繰り返し、寒いとしか言わない口振りで
何かをさせたいのだと漸く気付いた

「…、なる程」

もう一度ゆっくり滝を観察して
足りない物で確信を得る

「寒いー」
「黙って」

少しだけ強引に
冷えた右手を掴んで絡める

「付けてください」
「うん」

左手にはさっきまで自分がしていた手袋を渡す

自分から仕掛けてきた事なのに、恥ずかしそうに
嬉しそうに笑うのは反則だと思う

繋いだ手を、離したくなくなるから


 
end


 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ