お題小説

□ずっと見ていたからね(跡部+滝)
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「跡部はさ、余裕ができたよね」

クーラーの効いた教室の窓を大きく開けて滝は言った

「あーん?」
「余裕ができたんだよ」
くるり、振り返って
にこり、笑いかける

ふわり、浮きかけた書類を押さえ
ちらり、滝の表情から意図を探る

「そう言うお前も変わったな」
「そうかな?」

首を傾げる滝を持っていた万年筆で指す

「『クーラーが効いてるのに空気入れ換えるなんて信じられない!』…だったんじゃないのかよ」

言うと滝は楽しげに事務机まで歩き寄った
書類を筆箱で押さえてそれを待つ

「『書類処理中に話し掛けんじゃねぇ』ってのはどうしたのさ」

ぐるり、机を回って来る
するり、手を差し出すと

当たり前のように膝に乗ってきた
首に手を回しお姫様気分

「甘えたは変わんねぇな」
「包容力には磨きかかったね」

「気まぐれレベルは上がったな」
「振り回されるのイヤじゃないらしいよ」

開け放った窓から風が入る
植えられている広葉樹が柔らかく鳴る

ずっと見ていたからね。
言葉遊びを楽しむそんな二人
ふたりきり

ずっと見ていたから。

「幸せなんだな」
「そのまま返すよ」

お互いの幸せを



end

 

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