お題小説

□誰にも渡さない(塚リョガ)
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カリカリとシャーペンがノートを滑っていく
時折捲られる教科書
悩む事なく解かれる問題

普段から予習復習完璧なんだから、当たり前なんだけど、な。
でも、だからこそ、

「つまんねぇ」
「遊びに行けば良い」

視線すら向けてくれず、
書く手すら止めてくれず、
即答された。

理解ある恋人で助かるよ。
本当、涙が出るぜ

大人しく手塚を眺めながら寝る体勢に入った。
だって仕方ない。
今日は離れたくない気分だから。

睡眠も食事も満たされて健康的なオレって珍しいんだぜ
分かっているのかいないのか知らないけど、

テスト期間中に他人に気を配る余裕がないのかもしれないけど。

綺麗に伸びた広い背中を眺めながらグルグル考えていると
机の上にあった携帯が鳴った

当然、手塚は教科書から目を離し
携帯の通話ボタンを押した

…あ、なんかヤベぇ

「大石、どうした?」

…凄ぇ今ドロドロしてる
「あぁ、恐らくそれで良いだろう」

…手止めて、オレじゃなくて、
違う、誰かと、時間を、

「どうした、リョーガ」
「…ん、」

気付いたら携帯を取り上げていた
電源も落とし、ようやく正気に戻る

「何してんだろうな」

でも、

「「嫉妬」だな」

パタン

携帯を閉じてベッドに投げる
確認もせず目を合わせ

ニコリ、笑んだ

…絶対、誰にも渡さねぇ

正面からきつくきつく抱き締めた


end

 

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