作品その1

□だいて(日吉滝)
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畳は音を吸う
滝を横たえながら思う
「余裕?」
クスクスと笑われてもどこか冷静
「今日は、な」
「つまんなぁい」
口封じに啄む
「ちゃんと、して」
言う、自分の下に居る人の目を真っ直ぐ見ると
目元を染めて首に手を回してきた
閉じられる目を勿体ないと感じるけれど、
静かにそれに乗る
「ん…」
鼻から抜ける音は染まり始めて
それを見越した上で意地悪く唇を舐めて離れる
「なぁに…?」
もどかしそうに尋ねてくるのを留めて
耳から首筋を丁寧に愛撫する
「ふ…っ」
「どうしました?」
わざと耳元で、かすれた声で呼ぶ
小さく身震いする愛しい人が目だけで訴える
でも今日は、言って欲しい
ほら、わかってるだろう?

「…だいて」

その言葉に口の端が上がるのを止められなかった

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