作品その1

□雪春(跡リョ)
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「今は…冬?」
跡部の私室
庭に出る大きな窓に立つなり問う
手を這わせた窓の向こうは純白の世界だった
「まだ止みそうにないな」
その様子をソファから眺めていた部屋の主は質問に答えなかった
「…で?」
「暦の上では春だが、体感的には冬だ」
振り返る事無く再度問いかけたリョーマはため息を吐いて窓を開けた
「サム…」
「当たり前だろ」
差し出した右手に降る雪はその場で溶けて積もらない
更に遠くへ、と身体を伸ばすと後ろから抱き寄せられた
「なに?」
「それくらいにしとけ」
器用に片手で窓を閉め、それでも自分を離そうとしない腕が暖かかった
「…ケーゴ、何甘えてんの」
「久々の休みなんだから良いだろ」
「良いけど」
「雪が溶けたら高等部入学だしな、いつ休めるか分からねぇ」
わかってる…環境が変わる事も、今以上に忙しくなるだろう事も。

「でも、傍にいろ」

…そう言うだろう事も。
「当たり前じゃん」



不安は雪と一緒に溶かしてしまおう

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