□青春■

□レンズの奥の視線。
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そのガラスのレンズから

貴方は何を見ているの?

何を写しているの?






【レンズの奥の視線。】






「柳生くんてなんであんなに紳士で格好いいんだろう…」

「…ばっかじゃねーの?あんなのただつまんねぇだけの堅物じゃん」

「は!?今の世の中チャラチャラしたチャラ男が溢れている中であんなに紳士な柳生くんは貴重価値が高いんだよ!」

「普通に格好いい俺のが天才的に貴重価値が高いだろぃ」

「ブン太は自意識過剰過ぎるよね…」

「自意識過剰なんかじゃねーよ!!!本当の事だしっ」

「柳生くんは本当の事でもそんな事言わないし」

「…レディーファーストなんて下心丸見えなだけだろ」

「なっ…!柳生くんはそんなんじゃないもん!!」


私の理想の柳生くんのイメージを壊しまくるブン太

今日はいつにも増してうざいししつこい


「…機嫌悪いね 飴でもいる?」

「いる!……って物で釣ったって俺は認めねーからな!!」

「は?認めないって何?柳生くんが紳士で格好良くてブン太は足元にも及ばないって事?」

「……他に柳生のどういうとこがいいってんだよ」

「え ………眼鏡」

「眼鏡…?」

「眼鏡」

「…なんで?」

「知らないの?眼鏡をかけると格好良さ三割増しなんだよ!?」

「んな馬鹿な…」


ブン太は呆れたような顔をして私が出しかけた飴を奪い取り部活に行ってしまった

まぁ ブン太にはこんな乙女な気持ちなんかわかる訳ない


多少言い過ぎたかもしれないと思ったけど、いつもの事なので私はそのまま家に帰った





―――――…


翌日
学校に行くと朝練を終えたブン太が顔を俯かせながら私の目の前にきた


「…ブン太?」


昨日の話がそんなに嫌だったのかな…
心配になってブン太の名前を呼ぶが反応なし


「ブン太…?」


もう一回呼ぶとブン太はゆっくりと顔をあげた


「…………ぇ」

「…どうだ?」

「え、え?」

「お前…眼鏡好きなんだろ?」

「え…あ……う」


顔を上げたブン太は柳生くんと同じような眼鏡を掛けてて(レンズはくもってない)
髪を七三に分けていた(七三には分かれてるけど、盛ったりして柳生くんとは違う)

けど 言葉が出なかった…


「…最初は柳生から借りようとしたんだけど 柳生の度が入ってるから仁王に同じようなの借りたんだぜ」

「………」

「そしたら仁王が『髪も七三にしたらどうじゃ?』って言うから髪もやったんだけど 柳生みたいにぺっちゃんこは似合わねーからさ」


ぺらぺらと喋るブン太は少し楽しそうで
でも私の反応がなかったのがいけないのか私の事を黙ってじっと見出した


そのレンズの奥からは大きな目が挑発的な目じゃなくて真剣な目で
レンズには私の顔が見えた


紳士で格好良くて眼鏡をかけてると三割増し?誰がそんな事を言ったの?
こんなの反則だ、絶対…

だって髪は紳士とは程遠い赤で髪が所々跳ねてるし
七三だけど今時風に盛っちゃってるし

眼鏡はちゃんとガラスレンズであの大きい目をまんま写し出してる


見た目も更に格好いいのに、その目に釘付けになってしまったのと同時に

柳生くんには感じられなかったトキメキが胸を襲った



end


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