078 シャングリラ後日談

□バリスタ
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「え〜〜!! ついに!! とうとう!! 仁美からそんな話が聞けるなんて〜〜!!」

週末、私は菜々の部屋を訪れていた。いつもと同じように彼女と達樹くんの近況を聞き、相変わらず仲が良さそうで安心した。仁美は最近どう? と尋ねられ、新卒の男の子に付きまとわれてる、と言っただけなのに、菜々は持っていた缶チューハイを叩くようにテーブルに置き、その手でニヤニヤ笑いを大げさに押さえた。

「『そんな』って何よ! なんっにもないから!」

「はー、長かった。安原くんと別れて何年くらい? 4……5!? 5年!?」

「聞いてんの!?」

「どんな子? イケメン?」

「まーまー。背はそんな高くないけど、モテそうではある。愛嬌あるし」

「いいじゃん! 付きまとわれてるって何?」

「そのまま。休憩中とか帰り道とか追っかけてくる。でも、私のことが好きなんではないらしい」

「へ!?」

「好きだけど、ラブかライクで言えばライクなんだって。でも好きだから一緒にいたいし、私のことが知りたいらしい」

「そ、そんなこと言ってきたの?」

「うん」

「変なヤツだ!」

「うん。どーしよう」

菜々は頬杖を付き、うーん、と呟いて天井を仰いだ。

「仁美は、その子のこと別に好きじゃないの?」

「うん。私年下に興味ないの知ってるでしょ」

「知ってるけど。じゃ、キライなの?」

「キライではない。いい子ではある」

「じゃあ、ほっといていいんじゃないの? ラブじゃなくてライクなんでしょ? お友達感覚ってことじゃん」

まあ、知って行く上でもっと好きになるかもしれない、とは言われたけど……。

確かに、別に大きな実害があるわけじゃないし、菜々の言う通り放っておいていいのかもしれない。それでもどこか釈然としないまま、週明けを迎えた。
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