078 シャングリラ後日談

□エメラルド
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当日、達樹くんは部屋まで迎えに来てくれた。『着いたよ。降りてきて』というラインを受け取って外に出たが、達樹くんの車が見当たらない。キョロキョロしていると、電話が鳴った。

『菜々ちゃん、こっち。ガンメタの車』

がんめた? と思いながら振り向くと、いつもの達樹くんの車ではない、濃いグレーの背の低い車から、彼が降りて来た。駆け寄って、腰を抜かしそうになった。

「達樹くん、車替えたの?」

「いや、レンタルだよ。デートだから、特別」

「な、何これ……外車?」

車の後ろに回ってロゴを眺める。

Por…sche…?

「ポルシェ!!??」

「そう。すげえ緊張するわ……こんなん運転することないから」

「ど……どうしちゃったの? こ、こんなの、乗れない……!」

「なんでだよ! 乗ってみてよ! これすげえから!」

「車のすごさなんてわかんない……」

ドアの方に回り、また驚いた。

「ひ、左ハンドルだ……」

「運転してみる?」

「むりっ!! 触るのも怖いっ!!」

「あはは! ほら、乗って乗って。これ、ルーフが開くんだよ」

「るーふ……?」

恐る恐る乗り込むと、達樹くんがボタンを操作した。すると、屋根が動き、やがてオープンカーになった。

「………!!」

「いやー、かっけえわ! 欲しいとは思わねーけど、たまに乗る分にはテンション上がる!」

「こ、こんな目立つ車で走ったら……!」

「大丈夫だって、今は閉じとくから。高速乗ったら開けよう! あー、天気よくて良かった! 雨降ったらなんも意味ねーもんな!」

「それでも目立つよ……!」

「ほんとは、ポルシェのオープンなら赤だろ! って思ったけど、さすがに菜々ちゃんに怒られそうだからガンメタにしたんだ」

「赤なんてポルシェじゃなくてもだめ!!」

「やっぱりな! よかった。さ、行こう! あー! 早くルーフ開けて走りてー!」

もう……こっちはドアを開け閉めするのも怖いのに、達樹くんはなんでこんなに楽しそうなの……。

そう思いながらも、楽しそうにはしゃぐ達樹くんを見ていると、私まで楽しくなってしまう。高速に乗ると、達樹くんは本当に屋根を開けた。

「あー、気持ちいい! 天気よくてマジで良かったなあ」

「風がー!! 髪の毛が乱れるー!!」

「あははっ! 乱れてても可愛いよ」

「もお……! ねえ、そろそろどこに行くのか教えてよ」

「まだ秘密。着いたらすぐわかるよ」
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