078 シャングリラ後日談
□エメラルド
2ページ/5ページ
当日、達樹くんは部屋まで迎えに来てくれた。『着いたよ。降りてきて』というラインを受け取って外に出たが、達樹くんの車が見当たらない。キョロキョロしていると、電話が鳴った。
『菜々ちゃん、こっち。ガンメタの車』
がんめた? と思いながら振り向くと、いつもの達樹くんの車ではない、濃いグレーの背の低い車から、彼が降りて来た。駆け寄って、腰を抜かしそうになった。
「達樹くん、車替えたの?」
「いや、レンタルだよ。デートだから、特別」
「な、何これ……外車?」
車の後ろに回ってロゴを眺める。
Por…sche…?
「ポルシェ!!??」
「そう。すげえ緊張するわ……こんなん運転することないから」
「ど……どうしちゃったの? こ、こんなの、乗れない……!」
「なんでだよ! 乗ってみてよ! これすげえから!」
「車のすごさなんてわかんない……」
ドアの方に回り、また驚いた。
「ひ、左ハンドルだ……」
「運転してみる?」
「むりっ!! 触るのも怖いっ!!」
「あはは! ほら、乗って乗って。これ、ルーフが開くんだよ」
「るーふ……?」
恐る恐る乗り込むと、達樹くんがボタンを操作した。すると、屋根が動き、やがてオープンカーになった。
「………!!」
「いやー、かっけえわ! 欲しいとは思わねーけど、たまに乗る分にはテンション上がる!」
「こ、こんな目立つ車で走ったら……!」
「大丈夫だって、今は閉じとくから。高速乗ったら開けよう! あー、天気よくて良かった! 雨降ったらなんも意味ねーもんな!」
「それでも目立つよ……!」
「ほんとは、ポルシェのオープンなら赤だろ! って思ったけど、さすがに菜々ちゃんに怒られそうだからガンメタにしたんだ」
「赤なんてポルシェじゃなくてもだめ!!」
「やっぱりな! よかった。さ、行こう! あー! 早くルーフ開けて走りてー!」
もう……こっちはドアを開け閉めするのも怖いのに、達樹くんはなんでこんなに楽しそうなの……。
そう思いながらも、楽しそうにはしゃぐ達樹くんを見ていると、私まで楽しくなってしまう。高速に乗ると、達樹くんは本当に屋根を開けた。
「あー、気持ちいい! 天気よくてマジで良かったなあ」
「風がー!! 髪の毛が乱れるー!!」
「あははっ! 乱れてても可愛いよ」
「もお……! ねえ、そろそろどこに行くのか教えてよ」
「まだ秘密。着いたらすぐわかるよ」