078 シャングリラ後日談

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五月の終わり、その日はひどく蒸し暑かった。菜々ちゃんが就職する前は、学校が終わっても彼女はバイトに出掛けることが多く、会える時間が作り辛かったが、今は俺さえ仕事を早く切り上げることができれば会える。早い時間に仕事を終えても、共演者やスタッフに飯に行こう、飲みに行こうと誘われることは多いが、『シャングリラ』のメンバーが中にいれば、気を遣って早く帰らせようとしてくれることが有り難かった。

二十時半、残業がなければもう部屋に帰っているだろうと菜々ちゃんに電話を掛けたが、彼女の第一声に、俺は腰を抜かしそうになった。

『はあい! 菜々です!』

……ん!?

「菜々ちゃん……酔ってる?」

『はい! ちょっといただいてます!』

「いやいや……え!? えーと……外?」

『おうちです! えへへっ』

おお……やばい。相当だ。

「菜々ちゃん、すぐ行くから。部屋で大人しくしといてね」

『え! きてくれるの? うれしー!』

「ちゃんと戸締まりして、カーテン閉めて待っててね?」

『はあい! わかりましたあ!』

やべえ。伝わってないかも。

何があったかはとりあえずさておき、車を飛ばして菜々ちゃんの部屋に向かった。
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