お題小説C
□098 オレンジ
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098 オレンジ
その日、私は未提出だった課題を居残りで仕上げ、一緒に居残ったクラスメートの藤堂くんと帰路に着いていた。もう校内には誰も居なくて、カラスの鳴き声がいやに響く。微かに、金木犀の香りがした。
「すげえな」
急に、藤堂くんが夕焼けを指差してそう呟いた。
「……そうだね」
私も、小さく呟いた。
「でも、私、夕焼けってあんまり好きじゃないな」
「なんで? キレイなのに」
「んー、終わる色だから」
そう、一日が終わる色。今日、こうして藤堂くんと一緒に帰れた一日も、あの色に包まれて終わって行く。まるで世界を飲み込むかのように、眼前でその色を主張する夕焼けが、憎らしかった。
「うーん……」
藤堂くんは、よくわからない、というように項に手を回した。私は、その様子を名残惜しげに眺めた。その時、藤堂くんがぱっとこっちを向いて、目が合った。
「でもさぁ、夕焼けって、一日頑張った人たちに、ご苦労さま、明日も晴れるよってご褒美くれてんだよ。嬉しいじゃん」
私は驚いた。考え直そうかとも思ったが、やっぱり楽しかった一日が終わって行くのは口惜しい。苦笑すると、藤堂くんが思い付いたように言った。