お題小説C
□097 唯我独尊
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でも…舞さん、20分も出て来なかったら、心配してしまいます……。
怒鳴られるのを覚悟して、トイレのドアをノックした。
「おい、舞。平気か?」
返事が無い。一瞬で血の気が引くのがわかった。
「おいっ、舞!!」
10円玉で鍵を抉じ開けた。舞は便器に突っ伏すように寝ていて、声を掛けても動かない。
「舞っ!! 起きろよ!!」
肩を揺らすと、抵抗された。
「いやっ、さわんないで!!」
内心ホッとしたが、異常なまでに俺から逃れようとするので面食らってしまった。
「もういいから、ほっといてよっ」
「バカか!! ベッドで寝……」
頭を抱くと、頬が濡れていた。
「……舞? 泣いてんのか?」
「………」
「舞」
「……ほんとは、同僚と飲んでたの。そしたらケータイ、勝手に見られて…お前彼氏にこんな冷たくしてたら振られるぞって、みんな……」
「ま……」
「私だって、わかってる。冷たくあたってるって……。ほんとはいつも、いつ嫌われるのかって、心配してるのに……」
舞の喉が痙攣し始めた。舞が、こんな風に俺の前で泣くなんて……。
「い、樹……いつもごめんね、うっ、いまも、迷惑ばっかり、ひくっ」
「舞」
「え、うわっ!!」
「とにかくベッド行こうな」
「や、ゆ、揺らさないで!」
「うんもうそこだから」
「うわ!! あー!!」
「はい静かに」
さっきよりも少し荒く舞を寝かせた。そして俺も、隣で横になった。舞を抱き締めて、無理矢理キスした。なんか言ってるけど、しらん。
「ちょっ、樹」
「なに」
「何する気」
「言わせる気?」
「やめて!!」
「やだ」
「具合悪いの!!」
「知ってる」
「バカ!! 死ねっ!! 噛むわよ!!」
「はは」
「何がおかしいのよっ!! いい加減にしないとっ」
「落ち着いた?」
「……え?」
「元に戻ったな」
くりっくりの目で俺を見ている。やっべぇ可愛すぎる。その気無かったけどこれは来るな……。
「舞、心配すんなよ。俺はお前のそういうところが好きなんだから」
顔をくしゃくしゃにして、舞はまた泣いた。から、今度は脇腹をくすぐった。殴られた。
「樹、ありがとね…」
「いーえ」
「泊まってってもいい?」
「いーよ。じゃあ抱いてもいい?」
「は!?」
「嘘だって」
「え、樹、したいの?」
「え? いや別に」
「ほんと?」
「何だよ。さては自分がやりたいからって俺に言わせようとしてんな〜?」
殴られた。
……まぁ、俺は舞のこういうところが好きですから……。
CONTD.