お題小説C

□096 声に犯される
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今日のラストは、私とあの人の二人だけ。

……確かに、仕事には私情は必要ない。でも、店にとって私情なんて関係ないからこそ、こういった嫌がらせ的なシフトを作るのだろう。ますます、バイトに向かうのが億劫になった。それでも、私が休めば、今日のラストはあの人だけ……。我慢しよう。我慢なら慣れている。諦めだってついている。きっと平気だ。

十時半、漸くノーゲストになった。十時上がりの人もみんな帰ってしまっていて、パントリーには私とあの人が二人だけ。私はゴミをまとめて、ちらっとあの人の方を見た。洗い場を掃除している。

ゴミは生ゴミと普通ゴミに分かれる為、普段はゴミ捨ては二人以上で行くのだが、この場合は独りで行くしかないかなぁ。というか、これ以上二人切りでいるのはちょっと……。

やっぱり独りで行こう。二回に分けて行かなきゃいけないけど、何とかなるよね……。

「山口さん、私ゴミ捨て行って来ますから、洗い場お願いしますね」

そう言うと、とんでもない答えが返って来た。

「えっ、俺も行くよ。洗い場もあるけど、まだ前出しも残ってるし、帰って来たら二人で残りできるでしょ?」



……最悪。

カートを押しながら、私は『最悪』という言葉を頭の中で繰り返し呟いていた。エレベーターの中で、ふと山口さんの方を見た。

―――睫、長いなぁ……。

ああ、だめだめ。仕事に集中しなきゃ!
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