お題小説B
□089 白い素足
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089 白い素足
高校三年の秋。部活を引退してから、もう二ヵ月が経っていた。周りの友達は、ついこの間まで文化祭やら体育祭やらで盛り上がっていたことを忘れ、みるみる内に受験戦争に飲み込まれて行くようだったが、私はいつまでも、その渦の中に飛び込めずにいた。
クラス中がノートやら単語帳やらを覗き込んでいる昼休み。ふと、足が、プールの方に向かった。
フェンス越しに見た水面は枯葉に塗れ、つい数ヵ月前までは美しく澄んだ青色だったことをまるで思わせない。私は飛び込み台に座り、ゆらゆらと揺れる枯葉をぼうっと見つめた。
……そういえばよく、部活が終わった後、あいつとここに座って話したなぁ。内容も覚えてないくらい、下らない話ばかりだったけど。
「……くしっ」
突然強い風が吹き、体がぶるりと震えた。
寒い……もう帰ろう。
しかし、立ち上がった時、声が聞こえた。
「てめぇ、飛び込み台に靴で登んなよな〜」
振り向くと、あいつがいた。