お題小説A

□052 ナルコレプシー
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052 ナルコレプシー

「……またかよ」

俺がトイレに立ったほんの数分の間に、希は人のベッドで布団まで被って行儀よく眠っていた。

「おい……起きろ、希」

「ん〜…やだ」

「やだじゃないの。お前、わざわざ俺の家に来て寝ることねぇだろ……」

「別に寝に来てるわけじゃないもん…ちゃんと大樹に会いに来てるんだよぉ〜」

「じゃ起きろよ」

「や〜」

「……もう知らねー、ずっとそうしとけ」

「うんおやすみ」

…………。

あー!!!!

「てめぇ!! 何なんだいい加減にしろよ俺んち来たらほぼ100%の確率で寝てんじゃねぇか!! そんなに寝たきゃ家で寝ろ家で!!」

そこまで言うと、希はぱっちりと目を開けて俺を見た。

「……だめなの」

「だめって?」

「自分の家じゃ眠れない。何だかそわそわしちゃって。安心できないの。大樹がそばにいなきゃ」

「……はぁ?」

「夜は眠れないもんだから、お昼は常に眠いし。大樹がいると余計ね。ごめんね」

「………」

希が夜に怯えるのには訳がある。

前に希が住んでいたアパートで、夜眠っていた時強盗に押し入られたそうだ。一ヵ月前のことだ。



……そういうことか。



「……っだよ、そんならそうと早く言えよな〜」

「言う前に気付くか気付かないかがジェントルメンかそうじゃないかの境界線だよね」

「………」

「ウソだって、ウソ。そんな顔しないでよ。大樹もこっち来て一緒に寝よ。眠いから変なことしないでよね」

「しねぇよ……」

「どうかな〜? まぁいいや。じゃー、改めておやすみっ」

「……ヘイヘイ」



とりあえず、俺を信用して、俺といることで安心するみてぇだから、何も言わないでおこう。

しかしそれから更に一ヵ月後、俺は希の今のワンルームに転がり込む(込まされる)ことになった。

……今度は俺が寝不足になりそうだ。





CONTD.
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