078 シャングリラ後日談
□天秤にかける
11ﾍﾟｰｼﾞ/11ﾍﾟｰｼﾞ
『よーお、達樹。掛けて来ると思ってたぞ。どうだった？』
「高崎さん、マジありがとうございます。最高でした」
『あっはっは！ そうだろう！ だと思ったよ！』
「今まで高崎さんにしていただいたことで一番うれしかったしありがたかったです」
『え！？ そんなに！？ もっとあるだろ！ 駆け出しの頃からよく相談にも乗ったし演技指導とかも……』
「さすが高崎さんです。俺のツボをよくわかってらっしゃいます。ありがとうございます」
『おい！！ 聞いてるか！？』
菜々ちゃんの部屋からの帰り、一旦帰宅することにした俺は、家に着くと同時に高崎さんに電話を掛けた。ワンコールで電話に出てくれた高崎さんは上機嫌だ。
『まったく……調子のいいヤツだな。おい、写真とか撮ってないのか？』
「俺以外の人間があの姿を見ることはないです」
『なんだよ！ 俺のおかげなんだぞ！ お前にも見せてやりたかったよ、あれを見た時の菜々ちゃんの反応！』
「あ……どうだったんすか？ つーか、いつ菜々ちゃんと会ってたんすか？」
『なんだ、聞いてないのか？ 菜々ちゃん、最初は康平に相談したみたいでな。【達樹くんと年の近い男の人の意見が聞きたい！】とか言って。康平と清水くんと４人で会ったんだ』
「へえ……！」
『なのに、康平も清水くんもろくな案出さなかったんだぞ〜俺だけだぞ！ 一発でお前の喜ぶものを提案できたの！』
「マジありがとうございます。で、菜々ちゃんの反応どうだったんすか？」
『軽い謝礼だな……。もう、真っ赤になって【こんなの着れるわけないじゃないですかっ！ 高崎さんのバカバカ！ ヘンタイっ！】つってそりゃもう可愛かったんだぞ〜もうちょっと罵ってくれてもよかったんだけどなあ〜』
「高崎さんの性癖に菜々ちゃんを利用しないでくださいよ……。いや、でも浮かびます。脳内再生余裕です」
『あれドンキで買ったんだけどな、ビキニの水着みたいなサンタコスチュームもあったぞ。来年はそれプレゼントしてやろうか』
「うわ〜〜マジすかあ！？ 見てえけど菜々ちゃん着てくれますかねえ……」
『菜々ちゃんに渡すと捨てられるかもしれないからお前に渡すか』
「俺が買ったと思われそうっすね……。でも、菜々ちゃん、言ってましたよ。高崎さんがくれたものじゃなかったらそのへんに捨てる気でいたって」
『へえ……。よっぽどお前に喜んでもらいたかったんだな。菜々ちゃんに感謝しろよ、そこまで嫌だったのを我慢してくれたんだから』
「……そうっすね……」
半分泣きながら暴れていた菜々ちゃんの表情や声が蘇る。つい苦笑いしてしまった。
『まあ、楽しいひとときの手助けができてよかったよ。じゃあな、誕生日おめでとう』
「あ、ありがとうございます。すいません朝から」
『ほんとだよ、お前早起きだな。もう一眠りするか』
「言うほど早くないっすよ！ ９時前ですよもう！」
『俺は今日昼からだから。菜々ちゃんの写真、送るのが嫌なら次会った時に見せろよな』
「それも嫌ですって！！」
言い切るか言い切らないかで、ブツ、と通話が途切れた。
見せねえってのに！ あんな可愛くてエロい姿、人に見せれるか！
携帯を操作して画面を切り替え、こっそり撮った菜々ちゃんのサンタコス姿を眺めた。
「一年頑張れるわ……」
気色の悪い独り言を呟きながら、俺も二度寝しようと再び携帯を操作してアラームを起動させた。
END