お題小説C
□099 アナログ
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099 アナログ
まぁ確かに、最近は「それ」が増えてるのは知ってる。なんか「それ」だと割引きしてくれるとことかもあるんだってね。
だけどね、物事には順序ってものがあると思うわけよ。そういう手順を踏んで行く内に、自覚とかが沸いてくるものなんじゃないの?
「……おめでた婚、ねぇ」
「最近じゃそう言うらしいぜ。『出来ちゃった婚』だと響きが良くないからってよ」
「出来ちゃったから結婚するんだから響きは合ってるじゃん。日本最大の某巨大掲示板じゃ『ズッコンバッ婚』って言うらしいよ」
「お前本当に女か」
「まぁどうでもいいよ。うまくやってる人もいるだろうけど、出来婚の離婚率の高さあんた知ってんの?」
「いや知らんけど、関係ねーだろ。出来婚だろうとなんだろうと、離婚する奴はするんだよ」
「うちらの関係と年から言って、赤ちゃん出来たら絶対結婚しなきゃならないじゃん。結婚を早まる奴は離婚も早まるもんよ」
「お前本当に22か」
もうかれこれ二時間はこんな話をしている。今月ちょっと遅れてるって言っただけでここまで話が広がるなんて。そして、私と彼との間に、ここまで大きな意見の相違があったなんて。
「まあ、貯金だって無いんだから、まだ結婚するわけに行かないでしょ。これからはちゃんと最初から付けてよね」
「金なんか無くても結婚くらい出来んだろ」
「あんたバカじゃないの」
「籍入れるだけじゃねーか。タダだろ」
「式は? 新婚旅行は? 住む家は?」
「………。いいだろそんなもん」
「いいわけねーだろ!! 親戚の手前とかあるだろが!!」
「くだらねー。明治時代かよ。何が親戚の手前だ」
「明治て。そりゃあんたは親戚なんかいないも同然だからね」
「うっせー! 大体何の意味があるんだよそんなんに」
「そりゃあ乙女の夢よ。私はハワイで式挙げて新婚旅行はイタリアに行って帰って来たら庭付き一戸建ての新居に住みたいの」
「お前バカだろ」
「あ!?」
「そんなことしなくたって幸せにやってける奴もいんだよ。古臭い考え方だな」
「………」
古臭い。確かにそうかも。
昔から女の幸せは結婚だと思い込まされていたし、式では綺麗なドレスを着て、新婚旅行で旦那さんとの仲を深めて、大きな一軒家で暮らすというのが「幸せな結婚」の条件だと思っていたから。
まだまだ若いつもりでいたし、仕事を辞めるつもりも無いし、結婚や子供なんて遠い未来の話だと思っていたけど、この人はそんな風に思ってないんだなぁ。
「まぁ中には出してないし、大丈夫だろ」
「……知り合いの出来婚の人はみんなそう言ってんだけど」
「んだよ、お前さては俺と結婚すんのがイヤだからそーゆー風に言ってんな?」
「いやそういうわけじゃ……。ってか何、じゃああんたは私が妊娠したら責任取る覚悟出来てんの?」
「出来てるよ。じゃなきゃゴム無しでヤれるかっての」
………。何だよちょっと嬉しいじゃん。
私も考えを改めようかな。
「あ、俺結婚したら徹底して亭主関白で行くから」
「テメェの方が考え古臭ぇじゃねーか」
END