お題小説C

□097 唯我独尊
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097 唯我独尊

『……むかつく』

「……は? だ、誰?」

『あんたほんとに現代人? 今何を使って私たちは会話してんの? そしてそのちっこい機械の画面には私の名前が表示されてるはずじゃないの?』

「やっぱり舞かよ!! どうしたんだよ、今何時だと思ってんだお前!!」

『うるっさいなぁ……もっと小さい声で喋りなさいよ、今何時だと思ってんの?』

「……。えっていうかマジでどうしたんだよ。こんな時間に」

『……何でもないわよ。ぅ、えっ』

「!? まっ…おま、酔ってんのか!?」

『……大声出すなって言ってんでしょ』

「すみません。……あのう、で、御用は……」

『今あんたの部屋の前まで来たから、開けて』

「あ!!?」

『早くしなさいよ、着信拒否されたいの?』

「わかったよ!! ちょっとくらい待てよ!!」



時間は一時を回っていた。寝ようと思っていたところだったので正直部屋に上げるのは億劫だったが仕方が無い。だが、ドアを開けて舞を中に入れた瞬間、ヤツは玄関先にしゃがみ込んでしまった。……俺、明日休日出勤なんですが……。

「……舞、酔ってんのか?」

「………」

「今、水持ってくるから」

「……お茶がいい」

「お茶な。何茶だ」

「伊右衛門」

「うん、ねーわ」

「生茶」

「ごめん麦茶かウーロン茶しかねーから」

「爽健美茶」

「うん、麦茶な」

グラスに氷を入れ、麦茶を注いだ。舞はずっと玄関でぐったりしている。靴箱の上にグラスを置き、舞を抱えた。

「飲めるか?」

「ん……」

「はい」

「ん」

目も開けずに、舞はゆっくりと俺の淹れた麦茶を飲んだ。どうやら相当らしい。こんな舞は初めてだ。

「舞、どうしたんだよ……お前らしくねえな」

「……上司に誘われたのよ」

「でも、そんなんなるまで……」

「飲め、飲めって言うんだもの。セクハラ目当てだってわかったから、逃げて来たの」

「!!」

「嘘よ、バカ」

「!! ……!!!」

「樹」

「な、何」

「運んで、ベッドまで」

「え、散らかってるから」

「いいから早くしなさいよ。吐くわよ」

「すいません」



すんげぇ重いけどがんばって舞を抱き上げた。重そうにすると確実に肘鉄を食らうので必死で平静を装いながら。足でベッドの上の本やら服を払い除け、舞を寝かせた。

「大丈夫か? 寝るか?」

「………」

「おい、舞」

「……怒らないの?」

「は?」

「明日、仕事でしょ」

「え、ああ……」

「こんな真夜中に、家に押しかけられて、世話焼かされて、しかも……ぅ」

「ん?」

「むり。でる」

「おお!?」

「トイレ」

「だああ!! はっ早く!!」

「へ、平気、一人で。絶対ついてこないで」

「でも」

「くんな」

「……すいません」
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