お題小説C

□095 隠しごと
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095 隠しごと

長い睫、逞しい腕。ああ、愛しい。

昂が車運転してるとこ見るの、久しぶりだからなぁ…かぁ〜っこいいなぁ……。

「……オイ、冴恵…お前なにぽけ〜っと人の顔見てんだよ、恐いよ」

「ううん、別に。ほら前見て、青だよ〜」

「えっ! …ってまだ赤じゃねーかよ。殴りますよ?」

「まぁ、女の子殴るなんて野蛮ね。あっ、青、青」

「えっ! …ってまだじゃねーかよ!! テメェ〜!!」

あー可愛いなぁ、なでなでしたい。怒って荒くなった声もかっこいいしよ〜、犯罪だよ、コレ。

「冴恵、聞いてんのか!?」

「ん、聞いてる聞いてる」

「ちっ……」

あ、舌打ちした。今日、四回目だよ。その苦虫を噛み潰したような表情は、あたしの見る限り今日七回目だけど。

「怒んないでよ、昂ちゃぁん☆」

「うっせ!! 昂ちゃんて呼ぶな!!」

「もぉ。じゃあ今日の映画のお金、あたし出してあげるから」

「マジでか冴恵ちゃん!! おっしゃ〜お前最高!!」

ひゃ〜『冴恵ちゃん』だって!! つっか最高なのはアナタですから!! もー、何なのぉ、その笑顔は!! ノックアウトされちゃったよ、冴恵ちゃんは。

「何だよ冴恵、黙るなよ」

「あーゴメン。考えごとしてた」

「……俺といる時に?」

「……へ?」

急に、昂が真剣な顔になって、こっちを見た。

「ちょ、前見」

「お前、俺といるときいっつもあんまし楽しそうじゃないし、すぐ黙り込むし、なんか…なんつーか、俺…あの〜……」

昂がそう言った時、私は、不意打ちのように、昂の頬に口付けた。

「ぅおっ!! な、何!?」

「バカだなぁ、昂ちゃん」

……昂。何よ、そんなこと思ってたなんて。言わないなんてずるいよ。

……でも、あたしは、口にはぜったい出さないけどね。





END
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