お題小説B
□080 コルク栓
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080 コルク栓
いつもわたしをおとしいれる、いじわるなあくま。
こんどはどんないたずらをするのかとおもっていると、わたしをふかいたにのそこへつきおとした。
そのぜっぺきはうっすらとしめっていて、とてもはいあがれそうにない。
あたりにはみょうなにおいがじゅうまんしていて、ひどくいきぐるしかった。
きゅうに、こわくなった。
わたしは、だして、とさけんだ。
なきながら、さけんだ。
ところが、そうするうち、だんだんとさんそがうすくなっていった。
そういえば、さっきからひかりもまったくはいってこない。
とじこめられたのだ。
わたしは、このままではしんでしまう、とおもい、きがくるいそうになった。
くやしくてくやしくて、むいしきにかべをりょうてでたたいた。
てのひょうめんに、あかむらさきいろのえきたいがついた。
すると、ずっとうえのほうから、ぽん、というけいかいなおとがした。
さっとひかりがさし、いやなにおいもきえ、くうきもたくさんはいってきた。
みあげると、あのあくまがわたしのかおをのぞきこんでいる。
「泣いてんのか」
にやり、と、きもちわるくわらって、いってきた。
わたしはこたえなかった。
そいつはますますきもちわるいかおになって、わたしのえりくびをつかみ、わたしをたにぞこからちじょうへだした。
「そんな顔すんなよ。死なせたりするわけねーだろ」
そういって、そいつはわたしのほおをべろりとなめ、またわたしをたにぞこへつきおとした。
そしてそれからそのあくまは、ひつようなときだけわたしをたにぞこからだし、ようがおわればまたわたしをたにぞこへとじこめるようになった。
ゆがんだあいじょうは、いたいたしい。
すぎたそくばくは、あいじょうとはいいがたい。
わかっている、それでも。
あのあくまがもっている、わたしをたにぞこへとじこめたあとにふたをするためにつかう、あれ。
あれをぬすんでしまえば、わたしはじゆうになれるのに。
わたしもゆがんだあいじょうをもっているせいなのだろうか。
きょうもわたしは、あえてあのたにぞこへとじこめられてやろう、とおもってしまっている。
END