お題小説B
□079 稀有
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079 稀有
冬が始まる頃、私は風邪を引いた。昔から季節の変わり目に弱かった為、注意はしていたのだが、うっかり窓を開けたまま寝入ってしまったのだ。喉が痛い、鼻水も止まらない、筋肉が痛い、ふらふらする。体温はとうとう三十九度を上回った。明日は土曜だし、学校が始まるまでには治るでしょ、と母親は高を括っていたが、日曜の夜になっても、私の熱は下がらなかった。
「お母さん、明日、あたし学校行けるかな……」
「何言ってんの、あんた自分の体温わかってる?」
「でも……」
「大事な授業があるなら、友達のノートでも見せてもらえばいいでしょ」
違う。私はもう、学校を休むわけにはいかなかった。進級とか出席日数とかは関係なく、学校に通い続けるということは、私にとっては既に義務だったのだ。
その時、メールが来た。着メロで、誰からのメールか、すぐに判る。そして、その内容も、大体想像がつく。しかし、メールを開いてみると、私が想像していたこととは全く逆の内容の文字が並んでいた。
『明日無理すんなよ、治らんかったら休めや〜』
私は、丁度三月前のことを、ぼんやりと思い出した。