お題小説B

□075 コバルト
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075 コバルト

ここ最近、私は彼に迷惑ばかり掛けていた。この間は、自分のミスの所為で、彼に手間とガソリン代をかけさせて遠出させた。冗談めかした言葉ではあったものの、「俺はお前の尻拭い役じゃねーぞ〜」という彼の一言が、今も脳裏に焼き付いている。

そして、一昨日から私は39度近い熱を出している。せっかくの彼の長休みを、私の体調管理が甘かった所為で台無しにしてしまった。会う約束をしていたのに。

さらに、本格的に熱が出る前日、「風邪気味だから今日は会うのやめよう」なんて言うと彼が怒ることを知っている私は、のど飴を舐めながら彼の用事に付き合った。どうやらその時に、彼に風邪をうつしてしまったらしい。

どうして、怒られてもいいから、家でおとなしくしていなかったのだろう。私は自分が悪者になるのが嫌なだけだったのだ。



今、彼は何をしているだろう。家で一人でいるのかな。そばにいてあげたい。火照る体が憎たらしかった。

それとも、あの人は別に私がいなくても平気かな。私がそばにいたって、私は彼に迷惑しか掛けられないから。

そういえば、私といる時に、彼は幸せそうな素振りを見せたことがない。私といても幸せじゃないんだ。いてもいなくても同じ。特別でもなんでもない。私の代わりなんて、いくらでもいるんでしょう。
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