お題小説B

□068 計算通り
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068 計算通り

「……また出張?」

「うん、今度は名古屋」



私の彼の仕事は、出張が多い。長休みは殆ど出張だ。さすがに土日は休みなのだが、私は夕方からバイトに向かうことが殆どだし、時間が合って一日一緒に居れる日なんて全然無い。……判ってる、けど。

「何だよ、仕方ねぇだろ? 仕事なんだから」

「やめて、その使い古された言い訳……」

「別に今回に限ったことじゃねーじゃん」

「ちーがーう。そのことで怒ってんじゃないっ」

「……何だよ?」

「ふん、自分で考えたら?」

……そんなこと言っても、こいつが理解できるわけ無いけど。しょうがないなぁ。

「……出張は仕方ないでしょ、あたしだってそこは弁えてるよ。でも、お前全然寂しそうにしないんだもん、あたしが傍にいなくったって、平気なのかとか思うんだよ!」

そう言うと、彼は目を丸くした。……もぉっ、やっぱりわかってない。

ぷいっとそっぽを向くと、急に後ろから抱き竦められた。私がびっくりしている間に、耳元で囁かれた。

「何で? ちゃんといるじゃん。心の中に」

……ああ、まただ。そんな風に言えば、私がコロッと機嫌直しちゃうと思ってんのね。いつものこいつの手。判ってるけど……こいつのこの手には勝てない。

「……もー、お土産買って来てよね」

また、こいつの計算通り。……まあ、それもいいか。こいつの優しい言葉をまた聞きたいと思ってる内は、私に勝ち目は到底無いわけだしね。





END
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