お題小説B
□065 いつかまたどこかで
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065 いつかまたどこかで
「あたしにはわかるぞ。彼氏とケンカしたんでしょ」
「ていうか、この子がこういう状態になる=彼氏とケンカした、だけどね」
「けっこう久しぶりだね。原因は?」
「……覚えてない」
「覚えてないのもお決まりだよねえ」
「うるさいな! 黙って聞いてりゃ好き勝手抜かしやがってぇっ」
「え!? なんなのこの豹変ぶり!!」
「わあーん! もうやだ別れる!!」
「って泣くのもお決まりだよね」
「このやろう!!」
「まーまー、理沙。あのね、本当にその人と縁があるなら、何度でも巡り逢えるんだって」
「………?」
「だからさ、その彼と別れたとしてもさ、理沙と彼に縁があるなら、いつかまたどこかで恋に落ちることもできるんだよ」
「……いつかまたどこかで?」
「多分ね」
「オイ、いい話のあとに適当だな」
「まあ気にするな。てわけだからさ、理沙――」
「やだそんなの!!!」
「うおお!?」
「あたし、ちょっと俊博んとこ行ってくる!! あと頼む!!」
「ええ!? あとって何…って聞いてねえしな!?」
「頼まれはしないけど、気を付けて行ってら〜」
……なんて教室を飛び出して来たはいいけど、俊博っていつもこの時間どこにいるんだろう。
ケータイで時間を見た。
五時過ぎかあ、微妙…って!! そうだ、ケータイ!!
……出やがらねえでやんの、あのやろう。
とりあえず、家、家に行ってみなきゃ!
……で来てみたはいいけど、インターホン押すのやだよ〜めちゃためらうよ! だって俊博じゃない人が出た時なんて言うの!? もしお母さんだったらそれこそ状況悪化しない!? 考えすぎ!?
オロオロと往生際悪く迷っていると、聞き慣れた声がした。
「あれ? お前何やってんの?」
「うあ! 俊くん!!」
ヒイイグッドタイミングだあ!
「何だよわざわざ家まで来て。俺まだ怒ってんだかんな〜人のコレクションをガラクタ呼ばわりしやが――いで!!」
「俊くぅん!!」
言うが早いか、私は力の限り俊博に抱きついた。
あったかいよぅ。ああ、泣きそう。
「俊くんごめんね、いい子にするから、言うこときくから許してぇ! 離ればなれなんかやだよぉ、いつ会えるのか、どこにいるのかわかんなくなるなんて、我慢できなくて死んじゃうよおぉ!!」
言い切ると同時に、わあん、と泣き声が漏れた。俊博は絶句し、すっかり困惑し切ってしまっていた。後から考えれば当たり前だ。俊博が言葉を発してくれたのは数十秒後だった。
「えと…理沙、とにかく泣き止めよ。玄関先だし、中入ろうぜ」
「やだ! あたしが満足するまで手ぇ離さないもん!!」
「いやっ、ええ!? 落ち着けよ、何があったんだよっ」
「なんで電話出ないのよぉ、すごい心配したんだからあ!!」
「え、電話してたん? うっわすげえかけて来てんじゃん!」
「やだよぉ〜俊くん、どっか行かないでよぉ! いつもそばにいてよぉっ」
「あー、わかった、わかったわーかったから、泣き止め!」
「……ホント?」
「ホント、すっげぇホント」
「ぎゅってして?」
「〜〜ほら!」
「チューは?」
「……! ……、ほら」
「『理沙愛してる』って言って?」
「……愛してるよ、理沙」
「………わあああん!!!」
「イヤ何でだよ!? 言う通りしただろ俺ェ!!」
「俊博ぉっあたしも愛してるよぉ〜!!」
「だーもう!! 俺の方が愛してるわこのアホー!!」
「あたしの方が愛してるもん!! うあああん!!」
いつかまたどこかで。
君をこの上なく大切に思える、魔法の言葉だね。
END