お題小説B

□065 いつかまたどこかで
1ページ/2ページ

065 いつかまたどこかで

「あたしにはわかるぞ。彼氏とケンカしたんでしょ」

「ていうか、この子がこういう状態になる=彼氏とケンカした、だけどね」

「けっこう久しぶりだね。原因は?」

「……覚えてない」

「覚えてないのもお決まりだよねえ」

「うるさいな! 黙って聞いてりゃ好き勝手抜かしやがってぇっ」

「え!? なんなのこの豹変ぶり!!」

「わあーん! もうやだ別れる!!」

「って泣くのもお決まりだよね」

「このやろう!!」

「まーまー、理沙。あのね、本当にその人と縁があるなら、何度でも巡り逢えるんだって」

「………?」

「だからさ、その彼と別れたとしてもさ、理沙と彼に縁があるなら、いつかまたどこかで恋に落ちることもできるんだよ」

「……いつかまたどこかで?」

「多分ね」

「オイ、いい話のあとに適当だな」

「まあ気にするな。てわけだからさ、理沙――」

「やだそんなの!!!」

「うおお!?」

「あたし、ちょっと俊博んとこ行ってくる!! あと頼む!!」

「ええ!? あとって何…って聞いてねえしな!?」

「頼まれはしないけど、気を付けて行ってら〜」



……なんて教室を飛び出して来たはいいけど、俊博っていつもこの時間どこにいるんだろう。

ケータイで時間を見た。

五時過ぎかあ、微妙…って!! そうだ、ケータイ!!

……出やがらねえでやんの、あのやろう。

とりあえず、家、家に行ってみなきゃ!



……で来てみたはいいけど、インターホン押すのやだよ〜めちゃためらうよ! だって俊博じゃない人が出た時なんて言うの!? もしお母さんだったらそれこそ状況悪化しない!? 考えすぎ!?

オロオロと往生際悪く迷っていると、聞き慣れた声がした。

「あれ? お前何やってんの?」

「うあ! 俊くん!!」

ヒイイグッドタイミングだあ!

「何だよわざわざ家まで来て。俺まだ怒ってんだかんな〜人のコレクションをガラクタ呼ばわりしやが――いで!!」

「俊くぅん!!」

言うが早いか、私は力の限り俊博に抱きついた。

あったかいよぅ。ああ、泣きそう。

「俊くんごめんね、いい子にするから、言うこときくから許してぇ! 離ればなれなんかやだよぉ、いつ会えるのか、どこにいるのかわかんなくなるなんて、我慢できなくて死んじゃうよおぉ!!」

言い切ると同時に、わあん、と泣き声が漏れた。俊博は絶句し、すっかり困惑し切ってしまっていた。後から考えれば当たり前だ。俊博が言葉を発してくれたのは数十秒後だった。

「えと…理沙、とにかく泣き止めよ。玄関先だし、中入ろうぜ」

「やだ! あたしが満足するまで手ぇ離さないもん!!」

「いやっ、ええ!? 落ち着けよ、何があったんだよっ」

「なんで電話出ないのよぉ、すごい心配したんだからあ!!」

「え、電話してたん? うっわすげえかけて来てんじゃん!」

「やだよぉ〜俊くん、どっか行かないでよぉ! いつもそばにいてよぉっ」

「あー、わかった、わかったわーかったから、泣き止め!」

「……ホント?」

「ホント、すっげぇホント」

「ぎゅってして?」

「〜〜ほら!」

「チューは?」

「……! ……、ほら」

「『理沙愛してる』って言って?」

「……愛してるよ、理沙」

「………わあああん!!!」

「イヤ何でだよ!? 言う通りしただろ俺ェ!!」

「俊博ぉっあたしも愛してるよぉ〜!!」

「だーもう!! 俺の方が愛してるわこのアホー!!」

「あたしの方が愛してるもん!! うあああん!!」



いつかまたどこかで。

君をこの上なく大切に思える、魔法の言葉だね。





END
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ