お題小説B

□064 タトゥー
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064 タトゥー

恥ずかしいんだってよ。何年一緒にいると思ってんだか。……ま、別に俺は構わねぇけどな。



「……っ、…う……」

「お前なぁ…我慢すんなよ……」

「……別に我慢なんて」

「ウソつけよ。変な呻き声出しやがって苦しんでるようにしか聞こえねぇ」

「バカ!!」

「っ、おま、急に締めんなよっ」

「バカ〜!!」

殴られた。雰囲気もクソもねぇ。

それから彼女はまた、目を固く瞑って声を漏らすのを我慢していた。……そういえば。

「なー、タトゥーって知ってる?」

「……知ってるよ、入れ墨のことでしょ?」

「うん」

「それが何?」

「お前みてぇ」

「は!?」

タトゥーって、「入れ墨」、「刺青」など別名があるが、「我慢」とも言うらしい。額に汗をじっとりと浮かべてふぅふぅ息をする様はとても良がっているようには見えない。タトゥーを彫られてる最中の人間はこんな顔するんかな。

にしたってコレちょっとダメだろ。声くらい聞かせろよ。いやあんま喘がれると困るが、萎えたらどーすんだ。

思い立ったように、彼女に深く口付けた。

「んっ…んんー! う、あっ、はぁ、ああっ…うっ」

おぉ、えらくおしゃべりになったな。ちょっと興奮してきた。キスを止めて、耳元で低い声で名前を呼ぶと、耳だけでなく頬まで真っ赤になった。羞恥心からだろう、涙目になっている。

自分の彼女を泣かせて興奮するなんて、俺も立派な「入れ墨者」だなぁ、と思った。江戸時代の庶民の前科の印らしい。

必死で俺にしがみついてくる彼女が愛しくて、俺はそれから無心になった。





END
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