お題小説B

□061 髪を洗う
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061 髪を洗う

私がいつも行っている美容院では、仕上げにいつもチェリーの香りのワックスを付けてくれる。私はこの香りがあまり好きではなかった。どこからかふわっと香るのならいいかもしれないが、自分の頭にこの香りがこびり付いているとなるととても気持ちが悪い。それでも向こうは好意でそのワックスを付けてくれているのだし、その気持ちを無下には扱えない。だから私は、家に帰ったらすぐに、髪を洗うことにしていた。



ところが最近、美容院へ行った帰り、運悪くあの人に会ってしまった。あの人は、私の髪の僅かな変化も見逃さなかった。そして、私が常に厭っていた、このワックスの香りを「いい匂い」と言ってくれたのだ。



それからも私は、美容院に行った後にすぐ髪を洗う習慣を止められなかった。ただその代わりに、あのワックスと同じメーカーのシャンプーとリンスを使うようにはなったが。





END
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