お題小説A

□049 至上
1ページ/3ページ

049 至上

ああ、なんて女なんだ。



『……また仕事なの』

「……うん」

『何回目? これで』

「……4回目」

『そうね、せっかくの日曜をもう4回も無駄にしてるのよ。』

「……すみません」

『あんたが仕事してる間、私がどんな風に日曜を過ごしてるか知ってるの?』

「……友達とオールしてるとこを俺の連れが見たらしいんだけど」

『とにかく、あんたがそういうつもりならもういいわ。仕事でも何でも好きにしなさいよ。私も好きにさせてもらうわ。』

「……(シカトですか)」

それから、舞は俺がメールしても電話してもシカトし続けた。これこそ何回目だ。

舞は俺が付き合って来た女の中で最もタチが悪い。いやウソです。えー……つ、つかみにくい。

なんで俺こんな女と付き合ってんだ?

そう思わせる事態が一週間後、また起こった。



「は!? な、なんつった!?」

『だから、仕事。今夜の約束はダメだわ』

「いや、おまっ、ずーっと前から約束してたじゃねーか!」

『そうね。でもしょうがないでしょ? 仕事なんだから』

「ちがっ、俺今日、誕生……!」

『ああ、そういえば今日はあんたの誕生日だったわね。でもしょうがないでしょ? 仕 事 な ん だ か ら』

………本当に、なんて女なんだ。

あんなんぜってーウソだ。俺への当て付けに決まってる。っあ〜〜俺マジでなんであんなヤツと付き合ってんだろ!!

もうイヤ。ちょっとコレはやだ。詫びの言葉も祝いの言葉も無かったしよ。

のろのろしながらデスクに着くと、同僚が寄ってきた。

「樹、どうしたんだよ。死にそうなツラしてんぞ」

「……舞にドタキャンされた」

「は? ま、舞ってあの…アレな彼女?」

「……そう(アレって何だ)」

「もう別れろよ〜。今日誕生日なんだろ?」

「………」

「あー、わーかったよ。今日は俺と飲みにでも行こう。な!」

「哲哉のオゴリなら行く」

「あ!? ……あ〜〜まぁいいよ! 飲めよ飲めよ!」

「まじ?」

「うんマジだから、早く仕事してくれ。俺が文句言われるだろ〜」

うん、持つべきものは友達だな。



結局相当な額を哲哉に払わせて、俺たちが家路に着いたのは深夜三時。ベロッベロだ。

「あぁ…やっべぇ〜吐く…もう吐く本気で吐く…ゥエッ」

アパートの階段を登るカンカンいう音でさえ頭に響いた。

「あー風呂入りてぇ……あ?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ