お題小説A
□049 至上
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049 至上
ああ、なんて女なんだ。
『……また仕事なの』
「……うん」
『何回目? これで』
「……4回目」
『そうね、せっかくの日曜をもう4回も無駄にしてるのよ。』
「……すみません」
『あんたが仕事してる間、私がどんな風に日曜を過ごしてるか知ってるの?』
「……友達とオールしてるとこを俺の連れが見たらしいんだけど」
『とにかく、あんたがそういうつもりならもういいわ。仕事でも何でも好きにしなさいよ。私も好きにさせてもらうわ。』
「……(シカトですか)」
それから、舞は俺がメールしても電話してもシカトし続けた。これこそ何回目だ。
舞は俺が付き合って来た女の中で最もタチが悪い。いやウソです。えー……つ、つかみにくい。
なんで俺こんな女と付き合ってんだ?
そう思わせる事態が一週間後、また起こった。
「は!? な、なんつった!?」
『だから、仕事。今夜の約束はダメだわ』
「いや、おまっ、ずーっと前から約束してたじゃねーか!」
『そうね。でもしょうがないでしょ? 仕事なんだから』
「ちがっ、俺今日、誕生……!」
『ああ、そういえば今日はあんたの誕生日だったわね。でもしょうがないでしょ? 仕 事 な ん だ か ら』
………本当に、なんて女なんだ。
あんなんぜってーウソだ。俺への当て付けに決まってる。っあ〜〜俺マジでなんであんなヤツと付き合ってんだろ!!
もうイヤ。ちょっとコレはやだ。詫びの言葉も祝いの言葉も無かったしよ。
のろのろしながらデスクに着くと、同僚が寄ってきた。
「樹、どうしたんだよ。死にそうなツラしてんぞ」
「……舞にドタキャンされた」
「は? ま、舞ってあの…アレな彼女?」
「……そう(アレって何だ)」
「もう別れろよ〜。今日誕生日なんだろ?」
「………」
「あー、わーかったよ。今日は俺と飲みにでも行こう。な!」
「哲哉のオゴリなら行く」
「あ!? ……あ〜〜まぁいいよ! 飲めよ飲めよ!」
「まじ?」
「うんマジだから、早く仕事してくれ。俺が文句言われるだろ〜」
うん、持つべきものは友達だな。
結局相当な額を哲哉に払わせて、俺たちが家路に着いたのは深夜三時。ベロッベロだ。
「あぁ…やっべぇ〜吐く…もう吐く本気で吐く…ゥエッ」
アパートの階段を登るカンカンいう音でさえ頭に響いた。
「あー風呂入りてぇ……あ?」