お題小説A

□040 嘘つき
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040 嘘つき

「羊飼いの少年」という物語を御存じだろうか。いつも「狼が来た」と嘘ばかりついていた少年が、ある日本当に狼に出会ってしまう。焦って人々に「本当に狼が来た」と助けを請うも、人々は「またいつもの嘘が始まった」と全く信じてくれない。結局少年は羊共々狼に食べられてしまったというイソップ物語の中の一つだ。

この少年と今の私は、全く逆だ。



誠実だから、そう付け加えて、あの人は私に好きだと言った。私とあの人の立場を考えて、私は初めてあの人に嘘をついた。本当は私も、あの人が好きなのに。私は普段、滅多に嘘をつかない。君の言うことなら嘘偽りは無いのだろうと、あの人は私の話した言葉を鵜呑みにしてしまった。

そして私たちは、それからお互いに目も合わせなくなった。
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