お題小説A
□039 ループ
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039 ループ
「あ。」
「あ。」
突然だった。
「……久しぶり」
「……おお。ってか俺ら会う度に言ってねぇ?」
「言ってるね〜」
「いや、最近まじで顔も見かけなかったぞ。何やってんだよ」
「ああ、さぼってる。」
「来いよ!」
「だってもう大学決まったもん。出席日数は一、二学期で稼いどいたし」
「まじか! いいな、お前っ」
「あんた、受験いつ?」
「あー…再来週ぐらい」
「覚えときなよそんくらい! 勉強してんの?」
「俺がすると思うか?」
「いや、しろよ!」
「やる気起こんねんだよ……」
そう言う幸田の表情からは、焦燥よりも諦観の色が見て取れた。私は少しの間、何も言えなくなった。
「……やっぱ、部活やってた頃が一番楽しかったっつーか。あの時があんまり楽しかったもんだから、思い出にしがみ付いてんのかな……」
部活……。
私は三ヵ月前に、プールの飛び込み台の上で幸田とこんな風に話したことを思い出した。
「もし大学受かったとしても、お前とは別々だしな。つまんねぇ」
……何でそんな思わせ振りなこと言うのよ、こいつは。
「……ちゃんと勉強しなよ。今からでも遅くないって、たぶん」
「たぶん言うなたぶん。」
幸田に額を小突かれたとき、予鈴が鳴った。
「あ、もう5限始まるね。じゃ幸田、受験頑張ってね」
「……お前、5限なに?」
「え? 保健だけど」
「じゃ、いいよな。」
「は? な、何が?」
「よっしゃ、行こう!」
「え!? どこに!?」