お題小説A

□038 破壊願望
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038 破壊願望

目が覚めた時、外はもう真っ暗だった。起き上がろうと布団に肘を付くと、横から呻き声が聞こえた。

「いたい…」

「あ、わりぃ」

「うで、もどして」

右腕を茉莉の頭の下に敷き、もう一度横になった。すると、茉莉が目を開けた。

「いま、何時?」

「九時ぐらい」

「うそぉ…帰らなきゃ」

「もうちょいいいだろ…今日は親いねぇし」

「あたしが親に怒られるのよぉ」

「お前さっき今日は遅くなるって親にメールしてただろ」

「……そうだっけ?」

「そうだよ」

寝起きの為か、少し舌が回っていない。髪を梳いてやると、気持ち良さそうに目を細めた。眠そうに目を擦る茉莉を見て、幼いな、と改めて思った。

「隆治〜……」

「なに?」

「さむい。服とって」

「俺がいるだろがよ」

「隆治つめたいもん」

「失敬な。おいで、ぬくいから」

「………」

もそもそと俺の腕の中に収まる。何て小さな体だろう。

こんなに小さくて、無知で、幼い茉莉を、ついさっきまで獣のように貪っていた自分に少しだけ恐怖を覚えた。

「……茉莉」

「ん?」

「してぇ」

「は? やだ」

「そんなこと言わずに」

「やーだエッチ! 変態!」

「うんわかったから。いいから」

「よくない! さーわーんーなー!」

「……そんな嫌?」

こう訊くと茉莉は弱い。うー、と黙り込み、俺に背を向ける。俺は都合良くそれをOKだと解釈し、項を舐め上げた。すると、ひゃぁあ、と間抜け極まりない声を上げる。……もう少し色っぽい声を出してくれ。

「……隆治〜」

「ん?」

「何して欲しいの?」

「ん〜…いや、いい。俺が好きに動くから」

「恐っ」

「あ!?」



ああ、茉莉は、無垢だ。

こんなに真っ白で純粋な茉莉を、俺は、薄汚い自分の欲望で汚している。



俺と初めて出会った頃、茉莉は本当に無知だった。それが、俺の手で、コトの際には必ず俺が喜ぶような、他の女ならきっと眉を顰めて嫌がるようなことをするまでになった。

俺は罪深い人間だ。自覚している。それなのに―――

俺のこの真っ黒な願望を疼かせる茉莉もまた、恐ろしい魅力を持っている、と思った。





END
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