お題小説A

□034 血と水
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034 血と水

どんなことでも、可能性っていうのは、ゼロじゃないんだって。

「ねぇ知ってた? 現在の日本では、白色の反対は黒色だって言われてるけど、昔はそうじゃなかったんだって」

「ふぅん……じゃ、どうだったの?」

「白色の反対は青色で、黒色の反対は赤色だったらしいよ。暗い、明るいって反意語でしょ、『暗い』っていうのは『黒』の語源で、『明るい』は『赤』の語源だから」

「あぁ、なるほどねぇ……でも、それが何なの?」

「だからぁー、そうすると現代では、赤色の反対の色は青色ってことになるじゃんか」

「うん、そいで?」

「だから、大丈夫だよ。……どんなに血を流しても、助けを期待できなくても、今ここにあるのは水しかなくても……赤と青は相反するんだから、傷に水を流せばきっと中和されて、傷も塞がって…きっと、大丈夫だよ」

「…バカだな、傷に水なんか掛けたら血が固まらなくなって出血多量になって、余計重傷になんだろ」

「……わかってるよ、そんなの。あきらめたみたいに、言わないでよ」

あきらめたら、可能性っていうのは、そこでゼロになっちゃうんだって。

血と水に、洗い流されちゃうよ。





END
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