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□006 パラノイア
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006 パラノイア
私は大学に進学する。彼は会社に就職する。
十一月。
推薦入試と、就職試験が、終わった。私と彼の、四月からの、新しい道が、決まった。
「就職ゥ!?」
友達の、派手な感嘆の声が教室中に響いた。
「声でかいよ!! そんなびびることでもないだろ!!」
「いやびびるだろ!! いや〜就職かぁ〜、高校も別々だったのに、また進路別んなっちゃったね」
「……うん」
彼の高校は男子校だ。だから浮気の心配は無かった。悪い友達に誘われて合コンでもされたらどうしようかと心配したことも度々あったが、どうやら彼の友達にはみんな彼女がいたらしく、この高校生活三年間、心配性の私も、特に心を傷めることは無かった。
私は、ふう、と溜め息をついた。
「はぁ…就職なんて…イヤだなぁ、あたし」
「まァた始まったよ。亜希の『イヤだなぁ〜』が」
「だってさ〜、きっとさ、かーわいいオフィスレディとかがいてさ、『新田先輩、コピー機の使い方教えて下さいます〜?』とかってさ〜」
「あ〜もうウルサイよ!! なんか話の設定が製造会社ぽくないけど!?」
「えー……でも、そーいうのよくあるっしょ?」
「ねーよ!! お前ドラマの観すぎなんだよ!!」
その時、チャイムが鳴り、先生が教室に入って来た。友達は、これ幸いと席に戻った。まだ話途中なのに。
ああ、心配だな……。勝則、今、何してるんだろう……。