カガツツ

□Making of Love
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 引き留められたらすぐにでも逃げたいが、そんな風な言い方をされれば逆にしたくなる。加賀はそういう、何とも厄介な性格をしていた。
「……自由ならまだいてやるか」
 にやっと笑ってまた腰を下ろす。
「か、加賀のバカ!」
「あ゛あ゛? バカはてめーだろ筒井、中間の数学赤点どころか0点取っててよ」
「うわああっ、だってっ、だって名前書き忘れたんだもんっ、もうッ加賀が何でそんなこと知ってるのさ?!」
 先ほどとは違う赤面で、筒井が加賀に掴みかかった。
 はたから見ると、ひたすらイチャイチャしている様にしか見えない。やっぱり、囲碁部の活動に加賀は邪魔かも知れなかった。



「はああ……」
 あの小学生。
 筒井は昼休みをぼんやりして過ごしていた。
 文化祭が終わったのはつい数日前。名人の詰碁集を加賀に破かれ、客だった小学生を三将として大会に出すことになっていた。いつの間にか。
「大丈夫、大丈夫! ……かな」
 バレたら大変なことになる。けれど、加賀の強引な提案がなければ、大会に出場するなど望むべくもなかった。
「……嫌いって言ってるのに、囲碁」
 どうして、加賀はそこまでしてくれるのだろう。
 時々、何を考えているのかわからない。いや、わからないことの方が多い。メガネの向こうの運動場は3on3で盛り上がっているけれど、筒井には入っていけない。
「……そんなに、負けたの悔しかったのかな」
 あの無邪気な小学生に。
 筒井は首を傾げた。
「負けず嫌いだしね、加賀」
 僕もだけど。見上げる空は、蒼かった。
 午後は美術で、その後は部活だ。大会までに、加賀に鍛えて貰えればな。都合良すぎるかな。
 心配よりも、やはり楽しみが勝っている筒井だった。





**************
筒井さんは何をさておいても鈍感。これにつきます。
伊角さんは自意識過剰だけど一部変な所が鈍感(笑)。
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