アキヒカ

□Bitter Christmas
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「……」
ヒカルは答えられない。まともに尋問に答えるには空腹で血糖値が低すぎた。頭が働かない。
アキラはヒカルの沈黙に苛立つ。
「君にとって僕は、一般的にクリスマスを一緒に過ごすべきとされる人間ではないのか。」
一般という言葉からほど遠い存在のアキラが、非常に分かりにくい表現でヒカルを非難した。非難されているなと、ヒカルはかろうじてその声音で感じる。
「……何で怒られんのかわかんねーんだけどオレ……」
そのまま素直に小声で反駁した。
「……僕の知らない所で、他の人間とコトに及ぼうとした事はどうなんだ」
「伊角さんの事かよ? それは謝ったじゃんもう、」
「謝った謝らないじゃない、君の心が分からなくなったからこうして聞いてるんだ」
「分かんない訳ないだろっ、オレさっき言ったじゃん!」
あっさりしたヒカルと執念のアキラはこうしていつもすれ違う。問題は違えどその度に喧嘩になって、我慢できず「もういい!」とどちらかが先に投げて、しばらく冷却期間を置くのが常な二人だ。
しかし、今回は違った。ヒカルも得意の「オレ帰る!」という必殺技を出さない。
「結局何がいーたいんだよ塔矢はー。簡単に言えよ簡単にー!」
メニューを持ったままアキラのはす向かいのソファに体を投げ出す。血糖値が下がり過ぎて、必殺技を出すのも億劫になっているのかも知れなかった。
「分かった。簡単に言おう」
アキラも、常にない忍耐強さを見せた。コメカミはややひきつっているが。
「君の中で、順位をつけるとしたら僕は一体何番目だ。それが聞きたい」
「え」
「……即答できないのか」
「だ、だって、いきなしそんなこと言われてもさあ……」
寝転がっていたヒカルは頭をかいて起き上がる。
「参ったなあ……あのさあ」
「何だ」
「それってちょー難しーんだけど」
「問題は人間関係においてだ。囲碁は入らない」
「別にそういう事じゃなくてさあ、何ていうか、順位ってツケらんないってゆーか、う〜、みんな違ってみんな大事じゃん、やっぱ」
ヒカルは鈍い上に博愛主義だった(少年マンガの主人公らしく)。
「そこを、順位をつけろと言ってるんだ!」
アキラも鈍い方だが、反対に偏愛主義だった。
「例えば、和谷と僕が溺れていたとして、どっちを助ける?!」
「塔矢って泳ぎ上手いじゃ」
「どっちだっ!」
アキラがテーブルを叩く。
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