アキヒカ

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アイツとオレの時間は、結構離れてて。
社会科の時間とか、アイツめちゃくちゃ一生懸命に聞いてた。たまに、「それは違いますよ!」とか文句つけたりして。
一度、トシ聞いた事があった。
「さあ、どうでしたかねえ。大体二十歳くらいじゃないですかねぇ」
じゃあ誕生日は?
聞いたら、逆に、誕生日って何ですか?って聞き返された(たまにそういう事あった)。
誕生日って、生まれた日の事に決まってるだろって言ったら、
「へぇー、そんな日をヒカル達は記念するんですねぇ〜」
って感心してた。
何か、秀策の頃はまだ、みーんなまとめて1月1日が誕生日って感じだったらしい。
「そんなら誕生日プレゼントとかもなかった訳?」
「なかったですねぇ」
げ。つまんないの。
「でも、プレゼントなどなくても、」
ひとが自分の生まれた日を覚えてくれているというのは、きっと嬉しいでしょうね。
アイツは言って、微笑んだ。
いなくなってから余計、思い出す。こういう、細かい会話とか。
思い出すと、まだ辛いのに。もっと優しくしてやれば良かったとか、色々考えちゃってさ。独りの時とか、特にヤバい…。
アイツの言葉、だから、できるだけ大切にしようとしてるんだ、オレ。できるだけだけど。
でも塔矢の誕生日なんて、なんとなくクリスマスの前?くらいのイメージしかなくて。
あーもう!! どーしてこうかなオレ〜!
とにかく、塔矢の誕生日改めて知ったの、スゲー最近。市川さんが、「進藤君は何かあげるの?」って訊いてきたから。
その場じゃ「やんない」って答えたけど。

■ □ ■ □

進藤から連絡があった。
「14日空いてるよな」彼は、確信を持ってそう言う。
「えーとさ、実はまだ考えてねーんだけど」「え?」
「とりあえずメシ食いに行かねぇ?」
「…ああ、いいよ」
何処にでも。


進藤の好物はラーメンだ。従って、彼が「おごる」と言い出した以上、店の選定に文句は言うまい。
「美味かったろー?」
「ああ」
池のある公園の風は冷たい。
「…塔矢ってさ」
進藤がじっと見る。
「髪結んでる時、けっこーカッコイイな」
「…」
髪ゴムをほどく手を止めた。
「モテんの分かる」
未だかつて、進藤がボクを誉めた事があったろうか。
「もててないよ別に」
「そうかぁ?」
ボクはキミにだけもてれば良いのだ。
「何気にさ、似合うよソレ」
「…ありがとう」
この場で髪を戻せなくなってしまう。
「あ、そーだ」
話の切り替えが早い進藤が、ごそごそと荷物を改め、
「プレゼント」
リボンも付いていない、板チョコを渡す。
「14日って、2月にバレンタインだし、丁度いいやって」
時期外れのチョコに、冷たい風も忘れた。
「本番には恥ずかしくてヤレナイからさ」
ポロッと出た言葉。無意識は怖い。
「…それは」
「ん?」
「つまり、ボクの事が好きだという事か?」
元々大きな進藤の目が、見開いて丸くなる。顔も赤くなる。可愛い。
「な…何でそーなんだよっ」
「バレンタインチョコなのだろう? これは」
誕生日に貰った、市販の板チョコ。こんなプレゼントは初めてだ。
「違うっ、そ、そういう意味じゃなくてーっ」
「じゃあどういう意味だ」
追い詰めると、進藤は目をそらす。
「う…ほら、アレだよアレ、」
彼が逃げ出す前に。
「ボクから言いたい事がある」
今、打ち明けよう。

《END》
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